次に、BIO COMPANYで実際にライブ出演したアーティストはどんな気持ちだったのか。ベルリンの女性シンガーソングライター、ヤーナ・ベルヴィヒ(Jana Berwig)氏(リンク)に話を聞いた。
――音楽活動へのコロナ危機の影響について教えてください。
ベルヴィヒ氏 コロナ危機で、予定していた全てのコンサートがキャンセルされました。ロックダウン後は、Facebookでストリーミングライブを週に一回行っています。しかし残念ながら、聴衆が目の前にいるステージと比べると、得られるものは多くありません。
そんな中で行われたBIO COMPANYのキャンペーンは、本当に素晴らしいと思います! 聴衆との十分な距離感にはもちろん配慮していますが、聴衆の前に戻ることができ、音楽活動で少しでも稼げることに、強く感動しています。私は歌手なのでマスクを着けたまま歌っていますが、なんとか歌えていると思います。
――このBIO COMPANY店頭コンサートへ、どのようにして出演したのでしょうか。
ベルヴィヒ氏 ミュージシャンのコミュニケーションサイトで、「こんな状況下ですが、ライブ演奏に興味はありませんか?」と私から打診しました。
――実際に演奏してみて、ロックダウンの緩和やコロナ危機の終了を実感しましたか。
ベルヴィヒ氏 コロナ危機はまだ続くもので、ライブ演奏ができたからといって終了したとは思っていません。ロックダウンの緩和で“普通の生活”に戻っても、直後は感染者数が増加するだろうと思います。そしてその後、また規制があるのでしょう。
今回のロックダウン緩和は、感染者数の減少といった科学的な根拠があるにせよ、国民が息抜きし、“普通の生活”を再び感じさせることが目的ではないかと思っています。コロナ危機は、今後も私たちと共にあると覚悟しています。
個人的にはコロナ危機をそれほど恐れていませんが、人々が普通に社会的な関わりを持ち、旧来のような“普通の生活”をもっと手軽に送れる日々が来ることを願っています。
BIO COMPANYの店頭ライブ演奏は、ロックダウンの緩和によって実現したものが、だからといって“元どおりの世界”が到来したわけではない。しかし、店頭を訪れた買い物客は、ライブ演奏を見て一瞬驚きの表情を見せた後、とても暖かいリアクションで受け入れている。この暖かいリアクションの背景には、コロナ禍での入場人数制限、ソーシャルディスタンス確保による待ち行列といった、ストレスも確かにあるだろう。
筆者には、日本は「とにかく自粛!」というムードが強く、感染リスクと経済損失の合理的なバランスが取れていないように見える。そして何よりも、「人々に少し息抜きさせる」機会が与えてられていないことが心配だ。今回のベルリンのBIO COMPANYの試みは、日本のスーパーマーケットでもぜひ実現していただきたい粋なアイデアだと考えている。
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