“密”になるほどの人気で売り上げ絶好調 「ホームセンター」はコロナを機に復権できるか?小売・流通アナリストの視点(5/5 ページ)

» 2020年06月02日 05時00分 公開
[中井彰人ITmedia]
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消費がECにシフトしても、リアル店舗の役割は残る

 われわれの外出自粛は功を奏して、何とか感染爆発寸前でとどまることができたようではあるが、特効薬やワクチンの普及までの少なくとも何年かは、「新しい生活様式」を強いられることは間違いなく、コロナ前より家で過ごす時間は長くなる。そうなれば、自宅で快適に過ごすためにお金を費やすことになるだろうし、そうした消費者のニーズに応えることができれば、ホームセンターはその存在価値を再認識してもらえるかもしれない。

 これまでも、リアル店舗のEC(ネット通販)シフトは進行中であり、さまざまな業態のリアル店舗における小売の売上は、徐々に奪われてきた。ウィズ・コロナの時代ともなれば、人との接触を避けなければならず、さらにECシフトが進む、というのが定説である。ただ、ここ何カ月の外出自粛を通して、リアル店舗の価値を再認識された方も多いのではないだろうか。人が店舗に行くのは、必要なものを買うためでもあるが、必ずしもそのためだけではない。人には「出掛けていく場所」が必要なのであり、リアル店舗にはその選択肢としての意義がある、と思うのだ。

 これまで、「時間消費」「コト消費」へのシフト、といったことも言われていたが、リアル店舗や施設が消費者に来てもらうために提供すべきは、新たな体験や情報だ、ということが明確になったのかもしれない。消費者が必要としているもの(ニーズが明確化しているもの)を買うのであれば、ネットで検索すれば見つかるのでECでも事足りる。ただ、必需品、消耗品以外の「不要不急」の商品の場合、消費者側には十分に情報がなく、店舗からの提案(接客だけでなく、ディスプレイや陳列など)によって、初めて購買検討が始まるものは多い。消費者が認識していないものに関して、情報提供していくという面では、店頭におけるマーケティングが果たせる可能性は残されているのであり、少なくともショールームとしての店舗の役割はまだまだ大きい。

著者プロフィール

中井彰人(なかい あきひと)

メガバンク調査部門の流通アナリストとして12年、現在は中小企業診断士として独立。地域流通「愛」を貫き、全国各地への出張の日々を経て、モータリゼーションと業態盛衰の関連性に注目した独自の流通理論に到達。


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