“密”になるほどの人気で売り上げ絶好調 「ホームセンター」はコロナを機に復権できるか?小売・流通アナリストの視点(3/5 ページ)

» 2020年06月02日 05時00分 公開
[中井彰人ITmedia]

ホームセンターが「首都圏攻勢」をとれない理由

 首都圏の国道16号線内側の居住者の方々にとっては、ともすればホームセンターはあまりなじみがなく、どんな店かイメージがわかない人もいるかもしれない。ホームセンターといえば、家に関するさまざまなニーズ(DIY、庭いじり、外壁修繕、掃除や洗濯関連グッズ、ペット関連、及び関連する家庭用消耗品……)を中心に取りそろえており、基本的には多種多様な商品群を幅広く陳列しておく必要があるため、平均的には3500平方メートル(約1058坪)以上、多くは5000平方メートル(約1512坪)以上という広い店舗を構えている。

 その上、多くの商品はかさばったり、重かったりするので、基本、クルマで来店する消費者が多く、駐車場も併設しておかねばならず、さらに広いスペースを必要とする。しかし、首都圏の中心エリアともなれば、そのような場所を確保(一般的には賃貸)するためには、相当な家賃を払わなければならない。しかし、ホームセンターは頻繁に買いに行く生鮮食品とは違い「購買頻度」の低い商品を並べているため、面積当たりの売り上げが低くならざるを得ず、地代の高い地域では割に合わない。

 そもそも首都圏のいい場所に、そんな規模のまとまった広い土地の空きが出ることはほとんどない(オフィスビル、タワマンなどにする方がよっぽどもうかるのだから)。従って、ホームセンターのような薄利多売の商売は、地代の安い郊外のロードサイドでやるものなのである。そういった事情もあって、ホームセンターの有力企業の大半が地方出身の企業である。業界1位のDCMホールディング、またDCMホーマックは北海道、同じくDCM系のDCMカーマは愛知県、DCMダイキは愛媛県、2位カインズは現在埼玉県本庄市に本社を置くが、以前は群馬県だったし、3位コメリは新潟県といった感じだ。

 また、ホームセンターが郊外中心に立地している理由は「土地代」以外にもある。「庭付き一戸建て」に住んでいる人が主な顧客である、ということも大きく関係している。これも当たり前のことだが、首都圏中心部では郊外と違って、マンション、アパート住まいの人が多く、借家住まいだったり、自宅を保有していてもマンションや狭小住宅で、庭などない人が少なくない。仮に、ホームセンターが近くにあったとしても、ほとんど用がないのであり、そんなに存在感もない。

 以下の図は、各種統計に基づき、模擬的に1人当たりのホームセンター利用額を都道府県別に示したものだ。見ての通り、おおむね大都市圏ではホームセンターの利用額は低く、その存在感は地方の方が高いことがよく分かる。特に東京都、神奈川県ではほとんど存在感はない、と言っていいだろう。緊急事態宣言発出時、東京都がホームセンターを、社会生活を維持するために必要な店ではない、と判断していたのも、そんなにおかしな話でもない。

都道府県別、1人当たりホームセンター利用額(各種政府統計から筆者が作成。統計対象企業が2社以下の沖縄県は非公表のためデータなし)

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