起業家が新型コロナで経済死しない心構え集中連載 新型コロナで経済死しないための方法 (2/3 ページ)

» 2020年06月02日 07時00分 公開
[池田直渡ITmedia]

 例えば、知り合いの喫茶店か居酒屋にでも頼み込んで、会社が休みの日にだけラーメンを売らせてもらう(喫茶店の厨房設備でラーメンが作れるかどうかは分からないが、そこはまあ例え話だ)。退職金を全て失うくらいなら、ラーメンの売り上げは全部その店にあげたって損はたかがしれている。

 何より店を経営するということをつぶさに観察できるし、おそらくはいろいろ教えてもらえる。お客さんからフィードバックも取れるだろうし、何より自分のラーメンの実力のほどがわかる。それでファンがしっかり付いたら、晴れて会社を辞めて独立すればいい。厨房機器の安価な購入先や食材などの仕入れ業者だって紹介してもらえるだろう。もしかしたらバイトを雇うツテもできるかもしれない。

 運という巨大な敵と戦うには、無限に打席を増やしていくしかない。しかも、その戦いは、店を開いてからも続くのだ。常に新しいことを模索していかなくてはならない。ラーメン屋としてスタートした店が、気づいたらかき氷屋になっているかもしれないし、カレー屋か焼きそば屋になっているかもしれない。ダメなことを続けても何も変わらない。違うことを何度でも試すのだ。それはトヨタがいうカイゼンみたいなものだ。

 かく言う筆者も2005年に、広告出稿が激減していく自動車雑誌の世界に見切りをつけて、ネットのビジネスニュースに転出した。しかしそのプロジェクトが頓挫したので、企業向けのコンテンツ制作業として起業したのだが、やってもやっても上手くいかず、結局は頼まれ仕事が来るままにこなしているうちに、気づいたらかつて見限った業界に不本意ながら舞い戻っていたのだ。ビジネスニュースを書いたスキルと自動車雑誌のスキルがたまたま重なって、毎週記事を書いている。

 何が言いたいかといえば、起業する時にどんなに考え抜こうが、そのままのプランで上手くいくことなんてまずないということだ。起業家の一番の仕事は、ダメなら変える、また変えるというカイゼンを永遠に続けていくことである。ラーメンがダメでカレーもダメだったとして、カレーラーメンが当たるかもしれない。

 そのカイゼンを続けるためのキャッシュフローが何とかなって、心が折れなければいつかヒットがでる。ブラッシュアップといえば聞こえが良いが、実は中身がより良くなっているかどうかはそれほど関係ないのかもしれない。全く同じフォームの同じスイングで、たまたま来た球が良ければホームランになることもある。

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