なぜそんな理不尽なことが起きるのかというと、病院の経営が急速に悪化しているからだ。コロナ対策でコストがかかっているところに加えて、一般の外来・入院が減少し、稼ぎ頭である人間ドックや健康診断もできていないため収入が激しく落ち込んでいるという。
例えば、積極的に新型コロナ患者の入院を受け入れている埼玉県済生会栗橋病院は、外来患者が減少したことなどで4月の病院収入は前年同月比で15%減の1億2000万円減っているという。「朝日新聞」(5月20日)によれば、院長が「つぶれるんですか、というレベルだ」として、このままでは職員の夏の一時金を当初予定の3分の1に引き下げざるを得ないという。
超過酷な重労働を強いられ、時に理不尽な差別や誹謗中傷を受けながらも、給料もガッツリ削られる――。つまり、医療従事者は、日本でも五指に入るほど劣悪な環境下にいる「ブラック労働者」なのだ。
という話を聞くと、「そうなったのは新型コロナという未知のウイルスのせいだ!」とか「我々の命を守るために必死にがんばる医療機関を批判しようってのか」などと不愉快になってしまう方もいらっしゃるかもしれないが、この問題をスルーしていることのほうが医療従事者への冒涜(ぼうとく)になる。
医療業界のブラックぶりを改善してほしいというのは、医療従事者のみなさんがかなり以前から声を枯らして訴えてきたことだからだ。
例えば、日本医療労働連合会の「看護職員の労働実態調査」(2017年調査)では、「慢性疲労」を訴える看護師の方は7割を超え、「仕事を辞めたいと思う」が74.9%にも達していた。その理由は「人手不足で仕事がきつい」が47.7%と最も多く、その次が36.6%で「賃金が安い」だった。
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