――近年の売り手市場は、人材の流動化に加え「自分のやりたいことや働きやすさ重視」といった、転職者の個人志向も強めてきたように思えます。今回の深刻な買い手市場化は、逆に転職者の安定志向や、従来の日本的な「会社に合わせる」働き方への逆行につながったりするのでしょうか?
喜多: 確かに景気が不安定になると、転職者は従前より安定志向になりがちです。リーマンショック時ほどの(転職希望者側の)強い不安感はまだ見えていません。ただ、一定のスキルや経験が無い人だと、やはりすぐの転職を希望するケースも出るでしょう。
とはいえ、成長産業に従事していたり、個人で(強い)スキルを持つ人であれば、個人の価値観に従って生活の満足度を高めつつ仕事する志向も増えていると見ています。
例えばテレワーク化です。今回のコロナを受け「終息後もテレワークを続けたい」と回答した人は53.2%と、非常に高い数値になりました(パーソル総合研究所 「新型コロナウイルス対策によるテレワークへの影響に関する緊急調査」)。
同調査では、生活満足度を大事にする価値観の人が増えた一方、同僚や上司とのやりとりが減ったという結果も出ています。(従業員が感じる)「職場の一体感」は、やはり少し減ったと言えるでしょう。
――不景気であっても、「個人志向から会社人間化」といった単純な揺り戻しだけではないと。
喜多: 景気が悪くなると仕事観は変わるものです。例えばITバブル以前では会社の規模や歴史、出自で就職を決めるのが普通でした。ITバブル以降は逆に過去の実績を当てにせず、ITベンチャーなどトップのリーダーシップが分かりやすく発揮されている企業に人気が集中しました。
一方で東日本大震災後では、「すぐに仕事に就きたい」という志向だけでなく、社会貢献にも関心が向くようになりました。
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