「外国人観光客はお断り」という“塩対応”が、よろしくない理由スピン経済の歩き方(5/6 ページ)

» 2020年06月09日 08時47分 公開
[窪田順生ITmedia]

観光地にモンスタークレーマーが増加

 これはあらゆる業界に言えることだが、日本人は戦後ずっと「低価格・高サービス」を常識として刷り込まれてきてしまった。

 例えば、コンビニバイトのような低賃金重労働の人々でも、高級ホテルのスタッフのような丁寧な接客をするのが当たり前だ。海外のコンビニで働く人は音楽を聞いていたり、ガムをかんでいたりするが、もし日本でそんな態度だったら大問題になる。低賃金重労働の象徴である宅配ドライバーも同様で、海外なら荷物はポンと玄関に置いて終わりなところ、ハンコをもらうために何度でも再配達をする。

 この「低価格高サービス」が日本人を世界でも有数な「金払いの悪い客」にしてしまった。それをうかがわせるデータが「観光白書平成30年版」におさめられた「諸外国における1人当たり海外旅行支出の比較」だ。オーストラリアが1033ドル、英国が972ドル、韓国が520ドルと続く中で、日本は146ドル。「1人当たりの海外旅行支出を比較した場合でも、日本は多くの先進国を大幅に下回っている」と分析されている。

 このように先進国の中でもトップレベルの「観光に対してケチな国民」である我々日本人が観光業の人々から高いサービスを提供されたからといって、いきなり気前よくポンと、金払いがよくなるだろうか。なるわけがない。「企業努力が素晴らしい」の一言で終わりだ。

 それどころか今度はその「高サービス」が当たり前になってしまうので、他の観光業者にも同等のサービスを求めるようになる。全国の観光地にモンスタークレーマーが増加してしまうのだ。

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