「外国人観光客はお断り」という“塩対応”が、よろしくない理由スピン経済の歩き方(2/6 ページ)

» 2020年06月09日 08時47分 公開
[窪田順生ITmedia]

日本の観光業者が“塩対応”

 マスクでもなんでも「国内回帰」をありがたがる人がたくさんいるので、どうしてもこういう方向へ流れたくなる心情は痛いほど理解できる。有名観光地を外国人観光客に占拠され、肩身の狭い思いをしていた日本人観光客を呼び戻す取り組みが必要だというのもまったく同感だ。

 しかし、だからといって、インバウンドを敵視してもなんの解決にもならない。それどころか、日本人観光客だけを大切にすることは、この国の観光を殺し、コロナでただでさえ弱っている地方経済に深刻なダメージを与えることになりかねないのだ。

 「外国人観光客がいないから観光がしやすくなったね」なんて喜ぶのは最初だけで、ほどなくして観光地のホテルや飲食店はバタバタとつぶれていく。雇用の維持も難しくなるので地域の消費もガクンと落ちていくのだ。

 なぜそんなことが断言できるのかというと、日本人観光客だけをターゲットにしても、観光業が潤うことがないことは、これまでの歴史が証明しているからだ。

 「昔は外国人観光客なんかいなくて観光地が静かでよかった」と遠い目をする人がたくさんいらっしゃることからも分かるように、インバウンドに力を入れ出したのはこの10年くらいの話だ。例えば、10年の訪日外国人観光客は約861万人。現在の3割弱しか外国人は来ていなかった。

訪日外国人観光客、この10年ほどで急増している(出典:JTB総合研究所)

 なぜ来なかったかというと「招かれざる客」だったからだ。日本語もロクに通じないし、温泉の入り方さえよく分からない。地域住民とのトラブルや苦情がくることも多いので、「日本にくるなら日本語や日本文化をある程度、勉強してから来やがれ」と日本の観光業者側が“塩対応”をしていたのである。

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