こうした状況の背景には、エコノミストなどの想定よりも早く経済が回復している点がある。自動車販売状況で見ると、中国では4月の販売台数が22カ月ぶりに前年同月比でプラスとなった。米国でも、5月の販売台数は予想以上の回復だった。「当初は4−5月の販売は7〜8割落ち込むという見立てもあった」
米国と中国の自動車販売台数は4月を底に回復した。自動車販売動向は日本経済への影響が大きい(フィデリティ投信資料より)
6月5日に発表された重要経済指標である、米国雇用統計も大きなサプライズだった。4月に14.7%まで達した失業率は、5月はさらに悪化すると予想されていたが、13.3%とポジティブサプライズとなった。カナダの雇用統計でもポジティブサプライズが出ており、「4月に底を打って、5月に戻り始めているという解釈が確からしくなっている」。
米国だけでなくカナダでもポジティブサブライズとなった雇用統計(フィデリティ投信資料より)
時間従業員の労働時間についても、4月に底打ちし5月からは戻り始めている。丸山氏によると、「人々がどこで過ごしているのかを匿名でチェックするスマホアプリでも、同じようなトレンドを示している」という。「まだまだ先だと思われていた、バック・トゥ・ノーマル、正常化への道が早まっている」
米国時間給従業員の合計労働時間も4月に底打ちした(フィデリティ投信資料より)
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