日本でも計画されている統合型リゾート(IR)の海外の施設はコロナ感染の拡大で閉鎖されていたものの、ここにきて韓国、マカオや米国のカジノは再開の動きが出ている。
IRの中で多くの人が集まってゲームをするカジノは、新型コロナウイルスに感染しやすいといわれる密集集団を作りやすい。それだけに再開するにあたっては感染防止策がキーポイントになる。しかし、カジノが売りになっている観光地では観光客の激減で街が寂れてしまっては元も子もないとして、前のめりで営業再開を認めざるを得ない事情もあるようだ。
米国には約1000弱のカジノ施設があるが、コロナ禍の拡大で閉鎖された。その代表格がギャンブル都市としても有名な西部のネバダ州にあるラスベガスだ。年間で4000万人以上の観光客が訪れ、このうち外国人は約650万人、日本人も20万人以上訪問するという。毎年1月には最大規模の電子機器の見本市コンシューマー・エレクトロニクス・ショー(CES)が開催されることでも有名で、最近では電気自動車なども展示され、世界から6万人が集まる。
ラスベガスは日本人にも人気があることから、アメリカン航空が2019年の年末から今年の年始の時期に成田からラスベガスまでの臨時の直行便を飛ばした。ギャンブルのほかにもバスケットボール、アメリカンフットボールなどプロスポーツのビッグゲームがたびたび開催されていて、エンターテインメント、コンサート、スポーツイベント、見本市を含めた世界最大の観光地として「エンターテインメントの首都」と呼ばれている。
ネバダ州のシソラック知事(民主党)は、5月22日に新型コロナウイルスの感染拡大に伴い3月から閉鎖が続いているカジノについて、6月4日の営業再開を目指すと明らかにし、同日から段階的に再開することになった。カジノは同州の経済を支える主要産業の1つで、米メディアによると、3月から続く閉鎖の影響で失業者が急増、税収も落ち込み、早期再開を求める声が高まっていた。
州当局によると、5月22日現在で同州の感染者は7401人、死者は387人。地元メディアによると、4月の同州の失業率は28.2%に達し、全米で最悪の水準となった。ホテルなど主要施設が閉鎖されたことによって失業者が急増し、これが長引くと社会不安につながるおそれもある。このため、感染リスクが多少あっても、観光で成り立っている同州の経済を疲弊させるわけにはいかないようで、前倒しの形で営業の再開を認めた形になっている。
ネバダ州の委員会は5月26日、コロナ感染症について「フェーズ2」に移ると発表、カジノを含むゲーム産業が営業再開するために順守すべき事項をまとめたガイダンスを発表し、営業再開予定の7日前までに同委員会に再開計画を提出するよう求めるなど、厳しい予防策を課している。
例えば、まずカジノを含むゲームを楽しむ場所にいるスタッフについては、仕事に従事する前に20秒以上の石けんを付けた手洗いを義務化する。マスクを含む防護服の着用を推奨するなど、感染予防に最大限注意している。ゲストについても同様で、室内の人数は定員の50%以内とし、密集状態を作らないよう気を付けている。スロットマシンに座るときは並んで座ることは避け、1台ごとに空席を設けるなどのルールを定めて、ソーシャルディスタンスを取るようにしている。
テーブルを囲んだ人気の高いトランプゲームについては、ブラックジャックは1つのテーブルで最大3人まで、ルーレットやポーカーは4人までとするなど、テーブル着席数を半分に減らしてお客が集団で密にならないよう厳しく指導する。義務化するかどうかは明確ではないものの、お客にもマスクの着用を求めるようだ。しかし、マスクを着用すると顔の表情が見えないため、ゲームをする場合に支障が出る恐れがあり、どう対応するのか注目される。
米国の東海岸のニュージャージー州にあり、カジノを含むリゾート施設がある都市アトランチックシティーについては、6月5日を期限とした自宅待機命令が発令されていた。これによりカジノ施設はマーフィー州知事令により3月16日から閉鎖されている状況で、5月中旬から一部について営業再開を認めているものの、ラスベガスのように全面再開のめどは立っていないようだ。
またルイジアナ、ミシシッピ州では5月17日の週にカジノの営業を再開しており、カリフォルニアのニューサム知事も6月8日に再開を目指すと発表している。
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