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KDDIの「社内副業」、社員側のメリットは本当にある?――担当者に直撃日本型雇用からの転換も(2/3 ページ)

» 2020年07月06日 08時00分 公開
[服部良祐ITmedia]

真のポイントは「志願制」にあり

 今回の制度設計を担当したKDDI人事企画部企画グループの高橋智美さんは「社員がプロフェッショナルとして専門性を高め、成長して(社としても)イノベーションを起こせるようにするのが狙い」と説明する。

photo KDDI人事企画部企画グループの高橋智美さん

 高橋さんによるとKDDIでは従来、会社命令や公募を通じて社員に“兼業”してもらうといった、一般的な人材交流のスタイルが取られていた。ただ、こちらでは会社側が考慮した人選に基づき、しかも社員の席を所属部署からプロジェクト側に完全に移すケースが多かったという。

 一方で今回の社内副業制度では、社員は自ら志願し、しかもあくまで業務時間の一部分のみを副業に費やす形を取る。席は所属部署のままで、副業の業務も基本的にはプロジェクトにリモートワークの形で参加する(現在KDDIは、新型コロナウイルス対策で全社的にテレワークを実施)。

 志願する社員にとっては、例えば「ビッグデータのスキルを習得して将来的に社内で活躍したいが、自分のメーン業務では関係が無く難しいため、副業のプロジェクトを通じてかなえる」といった、希望する専門性の追求につなげることが可能になるという。

 会社側にとっても、プロジェクトにいい意味で想定外の人材が志願し、結果として成長・活躍してくれるといったメリットがある。高橋さんは「従来、会社側が兼業命令を発していた際は、会社(人事・管理職)が認識している人材の中からその対象を探していた。社内副業制度では、業務として今までそのプロジェクトに関わっていなかった人が応募するようになる。予期しないイノベーションが起きると思う」と期待する。

 副業という“気軽さ”も、人材配置の流動性を高める効果があるという。KDDIでは、ジョブローテーションが早めの傾向にある若い社員であっても、1つの部署に短くても3〜4年くらいはとどまるのが一般的という。必ずしも自身が長期的に伸ばしたい専門性のある部署に今いない場合、配置転換を待つよりも、この社内副業でスピーディーに「やりたい事」に挑戦できる、という訳だ。

 ちなみに今回、社内副業に応募した正社員を年代別にみると20代が最多となった。専門性を早くから身に付けたいと考える、若い社員が多く志願したとみられる。

 組織だけでなく社員サイドのメリットもうたうKDDIの社内副業だが、本来の業務とは別の仕事も担うことで結果的に長時間労働になったり、「通常の副業と違って金銭的には報われない」といった問題は起きないのだろうか。

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