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KDDIの「社内副業」、社員側のメリットは本当にある?――担当者に直撃日本型雇用からの転換も(3/3 ページ)

» 2020年07月06日 08時00分 公開
[服部良祐ITmedia]
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“就社型”から“ジョブ型”への移行

 高橋さんは「本業あっての“副業”であり、メーン業務も従前通りに行ってもらう。本業の方もどれだけ効率化できるか考えてもらう、という点も期待したい」としている。

 ただ、さすがに「従来と全く同じ量」の本業業務と副業を両立させるというよりは、同僚に一部負担してもらう、といったフォローも実際には入れていくという。人事評価に関しても、考課で規定する数個のミッションの中に副業の分も明確に組み込む、としている。

 この社内副業制度、真の意義はどこにあるのだろうか。経済評論家の加谷珪一さんは「従来の日本型雇用は“就社型”であり、こうした“ジョブ型”に移行する取り組みはトータルで見れば評価できる」と分析する。

 「新卒で総合職として入社した後は、会社の命令に応じて業務内容や勤務地が無制限に変化する」、という日本的な“就社型”雇用は、終身雇用制度の揺らぎと共に必ずしも一般的ではなくなりつつある。逆に欧米で一般的な、従業員の仕事内容や専門性を明確に規定したジョブ型が最近浮上してきており、社内副業の取り組みもその流れの1つとして捉えられる、という訳だ。

 実際、KDDIは新卒採用においてもここ数年、学生の持つ専門性を採用後も明確に生かす「ジョブ型」の採用枠を拡大しており、2021年卒分で約4割に上るという。

 一方で加谷さんは「こうした取り組みが(他企業などに)広がった場合、本来の社外で行う副業と同様に、通算の残業時間などが問題になる可能性もある」と警告する。

 「仕事でなく会社に仕える」日本型雇用が、良くも悪くもドライな「仕事そのものの対価をもらう」ジョブ型に移行しつつある今。KDDIの社内副業のようなケースの先行きは引き続き、注目を集めそうだ。

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