メディア
連載
» 2020年07月13日 10時15分 公開

組織を変えるファシリテーション 第1回:ただの対話スキルではない、「ファシリテーション」の本質とは (1/2)

コラボレーションワークを促進させるマネジメントスキルの1つ「ファシリテーション」。たんなる「対話スキル」を超えた、マネジメント層にこそ求められる「組織のファシリテーション」力とは何か。

[楠本和矢,ITmedia]

 社内会議や商談における「ファシリテーション」の必要性については、ここ数年でかなり共通認識化してきました。しかし、単にそれを「会議や打ち合せを運営するための“現場で使うテクニック”」という捉え方だけをしていればいいのかといえば、実はそうではありません。ファシリテーションとは、社員を自走的に動かし、組織の力を底上げするために最も必要な「マネジメントスキル」の1つなのです。

リーダーが身につけるべきスキルの1つ「ファシリテーション」(写真提供:ゲッティイメージズ)

 本稿では、まずはファシリテーションの本質的な部分に触れるとともに、そこから、なぜそれが組織マネジメントに通じてくるのかについて、現在置かれている事業環境や、その状況下で求められるリーダーの在り方とひも付けながら解説していきます。

ファシリテーションとは何か

 最初に、今回のお題である「ファシリテーション」について、その定義を確認しておきます。あくまでも私の解釈として捉えてください。

 ファシリテーションとは、「相手に対して『問い』を立て発想を促し、出てきた意見を整理した上、基準を用いて意思決定を図る方法」です。

 本定義について少し解説をします。最初は「本スキルが利用できる状況」についてです。相手がいるコミュニケーションの場面であれば、会議や商談だけではなく、あらゆる場面で使える技法であると捉えてください。そして、上記の定義の中で、特に重要な部分が3つありますので、少し解説を入れましょう。

 まずは「問いを立てる」という部分。これこそまさに、ファシリテーションの真骨頂にあたる部分です。良いリーダーとは、「良い問いを立てられる」リーダーです。黙っていても、意見、アイデア、情報を引き出すことはできません。かといって「何でもいいから考えて」というような雑な問いでもダメです。良い「問い」とは、目的に沿って、メンバーにしっかりと頭を使わせるような問いです。

 続いて「意見を整理する」という部分。ファシリテーションについては、さまざまな解説本がありますが、ここに触れているものは多くありません。しかし、この「整理する」という作業は、物ごとを前に進めていくためには相当重要です。最初は、総論各論ごちゃ混ぜになって出てくる要素を、並列のレベルに整えてはじめて、然るべき選択肢が浮き彫りになり、正しい意思決定に進めるのです。

 そして最後は「基準を用いて意思決定を図る」という部分。組織におけるリーダーの役割とは「意思決定」です。その意思決定の段で、メンバーにとって、理由がよく分からない選択をしてしまうと、納得感が得られず、その後うまく組織が動いていかない、さらにリーダーとしての信頼を失うことにもつながり兼ねません。必要なことは、目的に沿った「基準」を顕在化し、その基準を使った公平な評価に基づいた意思決定です。

 まさに、これらがファシリテーションの本質にあたる部分です。

ファシリテーションが求められている背景

 それではなぜ、昨今ファシリテーションが必要とされているのでしょうか。そこには、2つの背景があると考えられます。

 1つ目は、「働き方改革」「生産性の向上」というテーマの共通課題化です。もはや、労働時間の縮減の波にあらがうことは不可能です。そうなった際、今までと同じアウトプットを維持するためには、同じことをより短い時間で成し遂げるか、同じ時間でより良いものを出すかしかありません。さもなければ、生産性は目減りするのみ。その両方を、あらゆる業務で実現するために何が必要かといえば、「コミュニケーションスキル」の底上げ以外にありません。

 企業活動において、さまざまなものが生み出され、意思決定される場面とは、会議や打ち合せです。そのスキルを高めないことには、時間が短くもならないし、より良いものも生まれません。そしてその中心に存在するスキルこそが「ファシリテーション」なのです。これなくして、本当の意味での生産性向上、働き方改革はなし得ません。

 そして2つ目は、停滞を突破するための「イノベーション」への渇望です。全ての業界で成熟化が進む中、従前の事業だけでは頭打ち。そうなると、多くの企業が「新事業」をブレークスルーのきっかけにしようとするのは必然です。しかし、そういうことに手慣れた企業はほとんどありません。

 例えば、新しいプロジェクトが始まって、「イノベーティブなアイデアを出せ」と突然要求しても、メンバーからすぐにアイデアが出てくることはありません。だからといって、個人のアイデア創発力やセンスにのみに依存することも論外。アイデアを引き出すために最も必要となるスキルは「問い」を立てる力に他なりません。「いい問い」があるから、いいアイデアが出てくる。そしてそこからアイデアを練り上げていくためにも、また「問い」が必要となるのです。まさにファシリテーションスキルそのものです。

ファシリテーションは単なる会話の技法ではない

 上記が「ファシリテーション」が今の時代に求められる背景です。それを「狭い範囲」で眺めるならば、会議や打ち合せの生産性向上や、その中でのアイデアを引き出す技術に見えるでしょう。もちろんそれは、ファシリテーション技法の最も分かりやすい用途といえますが、現場で会議の進行役になるような人、例えばミドルマネジャークラスの人間だけが覚えればいいものなのでしょうか。ファシリテーションの本質を捉えると、ファシリテーションは、むしろ組織をけん引する役割を担う、マネジメントクラスの方こそ、よりよいマネジメント行うために「組織をファシリテーションする力」を会得すべきなのです。

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセスランキング
  • 本日
  • 週間

    Digital Business Days

    - PR -