野尻氏は、このような厳しい状況の日本の退職準備に対して、3つの処方箋を挙げた。
1つは、貯蓄率のアップだ。日本の貯蓄率は税込み年収の8%が中央値だが、フィデリティが推奨する16%まで上げると、退職準備スコアは19ポイント改善するという。
2つ目は、資産運用における投資先の見直しだ。諸外国に比べて低い株式への投資比率を見直すことで、9ポイント改善する。
3つ目が、退職予定年齢の引き上げだ。日本では年金給付年齢は65歳が基準だが、海外では67歳に上がりつつある。日本人の退職希望年齢の中央値である65歳から、67歳まで伸ばせば、退職準備スコアは22ポイント改善するという。
金融業界では「貯蓄から投資へ」という掛け声のもと、諸外国に比べて低い株式投資比率を引き上げようという施策が取られてきた。ただし、このポイントの改善効果でも分かるように、単に投資へ資金を回しただけで退職準備が進むわけではない。
「株式などに資産構成を変えることで、(運用結果を)掛け算する数字は退職までの年齢だ。そのため、若い人のほうがインパクトが大きくなる。また、貯蓄比率の引き上げも、退職年齢の引き上げも、運用との相乗効果で影響が大きくなる」と野尻氏は話した。
フィデリティの調査では、希望や自己認識と、客観的な数字の大きな乖離(かいり)が明らかになった。野村HDも、先日「資産寿命」が簡単に計算できるスマホアプリをリリースした。必要となる資産額と現実とのギャップを、シンプルに把握できる。「2000万円」といった一律の数字ではなく、各自が自分に必要な金額を把握し、それに対応する処方箋は整いつつある。
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