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アフターコロナに求められる、AIに使われない働き方アフターコロナ 仕事はこう変わる(1/3 ページ)

» 2020年07月18日 07時00分 公開
[武内俊介ITmedia]

アフターコロナ 仕事はこう変わる:

 新型コロナウイルスの感染拡大を踏まえ、業務の進め方を見直す企業が増えている。営業、在宅勤務、出張の是非、新たなITツール活用――先進的な取り組みや試行錯誤をしている企業の事例から、仕事のミライを考えていく。

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 コロナショックで在宅勤務が当たり前となり、仕事のデジタル化、IT化が加速している。アフターコロナの働き方では、成果を出せる人と出せない人の差が浮き彫りになる。筆者は税理士として、そしてSaaSの導入を通じてコンサルティングを行う業務設計士として活動している。そこで、クラウド会計を使いこなせる人と使いこなせない人の違い、経理に求められるスキルや付加価値の変化を通じて、AI時代に仕事を奪われない働き方を考えたい。

(写真提供:ゲッティイメージズ)

令和2年はテレワーク元年?

 新型コロナウイルスは私たちの働き方を大きく変えようとしている。国外ではTwitter社など複数の企業が「永遠に在宅勤務を認める」方針を打ち出している。国内でも富士通が日本のオフィスを50%削減し、従業員約8万人を対象にフレックスタイム制とテレワークを基本とする方針を打ち出した。

 総務省が毎年発表している『情報通信白書』の令和元年版によると、2018年のテレワーク導入率はわずかに19.1%。13年から5年間で倍にはなっているが、この時点でも8割の企業ではテレワークを導入していない。20年は日本においてもテレワークが本格的に普及した年として、働き方の大きな変換点になりそうだ。

(出典)総務省『情報通信白書 令和元年版』より転載

 コロナショックによってテレワークや在宅勤務は当たり前になり、仕事のデジタル化、IT化は更に加速している。

デジタル化がAIの活躍の場を広げる

 AI(人工知能)とは、言語の理解や推論、問題解決などの知的行動を人間に代わってコンピューターに行わせる技術のことである。チェスのDeep Blueや囲碁のAlphaGoは人間のトッププロを破るレベルまで発展し、世界に衝撃を与えた。

 アニメや映画の世界では人間と同じように自ら判断し行動するロボットが数多く登場するため、AIというと人間と同等の知能を持ったものを想像する人は多い。ただ、現時点でのAIはあくまで一定の条件下における特定の処理に特化したものに過ぎない。前述のAIも囲碁やチェスの腕前はトッププロ顔負けの実力だが、それ以外のことはなにもできない。

 14年にオックスフォード大学のオズボーン准教授らが発表した『雇用の未来』という論文では、AIによって10年後になくなる可能性の高い仕事がランキング形式で掲載されている。上位には保険事務員や税務申告書類作成者、データ入力係などの大量のデータをコンピューターに入力する仕事が目立つ。

 データを大量に処理するような単調な仕事はAIが最も得意とするところだ。他にも「◯◯だったら△△」という、明確な条件で判断が可能な仕事も上位に多く入っている。

 この論文のランキングは米国の職業を対象にしており、「日本はまだまだ紙やハンコなどが必要な手続きが多いので、この通りにはいかないだろう」と当時筆者は感じたものだ。ところがコロナショックによって一気にデジタルシフトが進もうとしている。

 政府と経済4団体による脱ハンコ宣言や、大手企業のテレワーク導入などは、それを象徴している。日本社会のデジタル化を阻んできた分厚い壁が崩壊し始めたのだ。

 これまでは契約や申し込み処理などが紙とハンコで行われてきたため、原本を見ながら登録内容をシステムに登録するような処理をせざるを得なかった。紙の書類を社外に持ち出すことはセキュリティ上も難しいため、紙の書類があることで多くの人々のテレワークを阻んできた。

 法律面で完全にデジタル化できないものもあるが、「みんながそうやっているから」という曖昧な理由で続けてきたものが大半である。社会の潮流が変われば、これらの多くは一気にデジタル化する。デジタル化されてしまえば、AIの活躍の場は増える。結果的に、データを処理する、単純な条件で判断をする、といった仕事はどんどんなくなっていく。

 しかし、AIがあれば専門知識が不要になるわけではない。クラウド会計が浸透してきた中小企業の経理を例に説明しよう。

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