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アフターコロナに求められる、AIに使われない働き方アフターコロナ 仕事はこう変わる(2/3 ページ)

» 2020年07月18日 07時00分 公開
[武内俊介ITmedia]

クラウド会計が浸透しても会計知識は必要不可欠

 筆者はクラウド会計のコミュニティなどにも参加しており、公認会計士や税理士と意見交換することも多い。その中で「クラウド会計で自計化をさせたら大変なことになった」という話を聞くことが増えてきた。

 「自計化」とは、企業や個人事業主が自ら会計ソフトにデータを入力することだ。自計化をするためには社内で経理処理する必要があるが、日々の取り引きを素早く会計データに反映できるようになり、経営管理レベルが一段上がるため、自計化の支援をする税理士事務所も多い。

 しかし、クラウド会計のシェアが増えるに従って「自計化問題」が発生するようになった。クラウド会計は、銀行口座やクレジットカードなどからデータを取得し、簡単に経理処理ができる。勘定科目や税区分なども取引内容からAIが推測してくれるため、ポチポチとクリックしていくだけで記帳ができ「誰でも簡単にできる」がウリだ。

クラウド会計ソフトでは、取得したデータを設定したルールやAIの判断で自動的に仕訳してくれるのが特徴だ(画面はfreee)

 これまでの会計ソフトは、一定レベルの会計知識がある人しか使うことができなかった。自計化するということは、会計知識を備えたスタッフが社内にいることを意味する。しかし、クラウド会計はクリックをしているだけで処理を進められるため、本来であれば自計化のレベルに達していない企業でも「自計化できた」と勘違いしてしまう。

 顧問先から渡された会計データが、売上や費用が二重に計上されている、現預金の残高がマイナスになっている、買掛金や未払金の取引がグチャグチャで正しい残高が分からないなど、ひどい状態で頭を抱える税理士は多い。

 会計知識がある人ならBSとPLをチェックして即座におかしいと思うはずだが、その知識もないためおかしいことに気づくことすらできない。

 時折SNSなどで「クラウド会計がもっと浸透すれば、会計知識がない人でも正しく会計処理ができるようになる」といった意見を見かけるが、とんでもない勘違いである。入力が楽になることと、正しい会計処理をすることとはまったく別の問題だ。

 現時点のAIなどが判断し推測や処理ができるのは、1つ1つの簡単な登録処理に過ぎない。正しく入力されるように設定したり、入力された結果をBS・PLで確認したりするのは人間の仕事だ。

 クラウド会計はこれまでの会計ソフトにはなかった便利な機能が多数あり、経理業務の効率化には非常に有用なツールではあるが、経理担当者の会計知識が不要になるわけではない。処理の自動化などが行われてしまうため、会計知識がない担当者が使用するとむしろ正しい会計処理を行うことができない。

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