報告書は、20年5月のトランプ大統領の不適切発言を記している。大意は次のようになる。
「ネバダ州は違法に投票用紙を郵送できると考えて、投票詐欺のシナリオを作成している」
「ミシガン州は、770万人に許可なく違法な不在者投票用紙を送った」
「(郵便投票では)メールボックスは強奪され、投票用紙は偽造され、違法に印刷され、不正に署名される」
トランプ大統領のこれらの発言は「進行中の大統領選挙で不正が起きている」という印象を与えるが、事実に反する。これらの不適切発言をFacebookが放置していることを、報告書は厳しく批判する。なお、郵便による不在者投票は新型コロナウイルス感染症への対策として導入された措置である。
ちなみに、Twitterは同じ趣旨のトランプ大統領発言に対して「ファクトチェックが必要」との警告マークを付けた。この後、デモ隊への暴力を容認する発言をTwitterが非表示にしたことでトランプ大統領は激怒、Twitterへの報復措置をほのめかした(関連記事)。
関連して、大手広告主――米大手通信会社ベライゾン、ファッションブランドのザ・ノース・フェイス、エディー・バウアー、パタゴニアなどが、ヘイトスピーチ対策が不十分であるとしてFacebookから広告を引き上げた(関連記事)。
公民権監査の最終報告書が問題視しているのは、トランプ大統領の発言内容がデマであるだけでなく、投票行動に影響しかねない内容であることだ。「投票で不正が起きている」というデマを流せば、それに影響されて「投票しても仕方がない」とあきらめる人が増えるおそれがある。
報告書が選挙への影響に対して特に厳しい姿勢を取っていることには意味がある。平等な選挙権は民主主義の基本であるだけでなく、公民権運動の肝心な部分でもあるからだ。
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