古いビルからビジネスが生まれる、新しい「有楽町」 ポストコロナ時代に存在感を放てるかハードとソフトの両面から再開発(1/3 ページ)

» 2020年07月24日 07時00分 公開
[加納由希絵ITmedia]

 三菱地所は2020年1月、今後10年を見据えた東京・丸の内周辺のまちづくりの方針を発表した。「丸の内NEXTステージ」という位置付けで取り組みを加速し、10年間で約6000億〜7000億円を投資する計画だ。

 その計画で“重点エリア”の一つとして挙げているのが「有楽町」。ビルの建て替えが進んだ丸の内や大手町と比べると、有楽町には古い建物も多く残っている。そういった建物の建て替えやリノベーションを想定した再開発計画だが、ただハード整備をするだけではない。古いビルも活用した“ソフト”の取り組みにも注力するという。

 新型コロナウイルスの影響で働き方が変わり、オフィスなどの環境整備を見直す企業も増えてきた。三菱地所は7月16日に「ポスト・コロナ時代のまちづくり」について発表し、有楽町を含む丸の内周辺エリアを「就業者28万人が毎日8時間×週5日過ごす場」から、「多様な就業者100万人が最適な時間に集まり、交流して価値を生み出す舞台」に変えると表明している。

 ハードとソフトの両面からまちづくりを進める有楽町エリアの取り組みから、今後の“ビジネスの街”の在り方を探る。

JR有楽町駅前。古い建物も多く残るビジネス街

“今、ここで働く人たち”にアプローチ

 有楽町は、東京駅や丸の内地区の南に位置するビジネス街だ。一方で、銀座や日比谷といった周辺エリアとも接しており、商業施設も多い。大企業中心の丸の内や金融のイメージが強い大手町と比べて、人や企業の多様性があるエリアといえる。

「丸の内NEXTステージ」の再開発計画。有楽町が重点エリアの一つ(出典:三菱地所ニュースリリース

 有楽町の再開発では、そういった特徴的なイメージを生かす取り組みを進めていくという。多様な人々が「何かを得たい」という気持ちで、気軽に来られるような街にするということだ。

 それが“ソフト”の取り組みにつながる。新しいビルを建てるハード整備とは異なり、ソフトの取り組みの対象は、すでに有楽町周辺で働いている人たちも含まれる。同社プロジェクト開発部長の吉村友宏氏は「丸の内、大手町、有楽町で働く人は28万人。だが、これまでは“今ここにいる人たち”にアプローチする取り組みがあまりできていなかった」と説明する。

 新しいビルの構築に伴い、海外企業を誘致したり、スタートアップ企業の成長を支援したりと、“新しい人”を呼び込む取り組みを強化してきた。一方、ビジネス街が活性化するためには、そこで働いている多くの人たちが活躍することが欠かせない。その原点に立ち返り、働く人一人一人の仕事に役立つ機能が街に必要だと考えたという。

 「日々、企業で働く人たちには『新しい情報や刺激を得て、仕事に生かしたい』といったニーズがあるのではないか。そこで、『この街にはそういう場がある』『だから有楽町に来たい』と思ってもらえる機能をつくることにした」と吉村氏は話す。

 そういった狙いから立ち上げたのが、有楽町エリアの再開発を“先導”するプロジェクトだ。

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