再開発が加速する東京。目まぐるしく時代が移り変わっても、ずっと残ってきたものにはどんな背景があるだろうか。ときには姿を変え、ときには古いものを守りながら、新しい時代を迎えた街や建物のストーリーと、将来への戦略を探る。
東京・池袋の街が大きく変わろうとしている。
11月1日、新たな複合施設「Hareza(ハレザ)池袋」の一部施設が先行オープン。11月16日には、池袋西口公園が大型ステージを備えた空間にリニューアルされた。さらに11月27日、主要スポットを回遊する赤い電気バス「IKEBUS(イケバス)」の定期運行も始まる。
池袋エリアの各地で進む再開発プロジェクトは、2020年の東京五輪・パラリンピックまでに一段落する。節目となる20年、たくさんの人に親しまれてきた池袋の街は、がらりと姿を変えるのだろうか。
企業と連携してプロジェクトを主導する東京都豊島区に話を聞くと、再開発のポイントが見えてきた。ビルや劇場、バスといった華やかな取り組みを進めてきた背景には、“暮らし”へのまなざしがある。その象徴が「公園」と「トイレ」だ。
「かつての『暗い、怖い、汚い』というイメージを一新したい」
20年にわたって豊島区長を務めている高野之夫氏がよく口にする言葉だ。そのために長年温めてきたのが「文化」を活性化させる試み。「にぎわいの中に文化が生まれ、文化の中ににぎわいが生まれる」と強調してきた。
その象徴の一つとなるのが、ハレザ池袋だ。旧区役所庁舎などの跡地再開発によって建設された。11月1日、宝塚歌劇の公演も行われる「東京建物 Brillia HALL(豊島区立芸術文化劇場)」などが先行オープン。1300席の大型ホールに加えて、ドワンゴが運営するサテライトスタジオ「ハレスタ」なども開業している。隣接する中池袋公園は、アニメ・マンガのイベントなどが集まる「聖地」としてリニューアル。20年7月のグランドオープン後は、年間1000万人の集客、480億円の経済波及効果を見込む。
また、「暗い、怖い、汚い」イメージが定着していたスポットもアートで生まれ変わろうとしている。池袋駅の東西を結ぶ通路「ウイロード」だ。老朽化した薄暗い通路の壁を美術作家が彩り、明るくカラフルな空間に改修。12月1日に完成記念式典を開く。
このような取り組みは、15年、区役所の新庁舎建設で幕を開けた。旧庁舎の跡地を定期借地権付きで貸し出すことで財源を捻出し、税金を使わずに庁舎を建てた日本初の事例として注目を浴びた。この成功を足掛かりに、再開発を中心とした“23のビッグプロジェクト”を計画。その多くが20年7月までに完成する。
しかし、池袋エリアが変わるきっかけとなった大きなターニングポイントは他にある。それは、14年の出来事だ。
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