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» 2020年07月28日 07時00分 公開

アブラムシにはてんとう虫、ドイツの「生物農薬」事情生物農薬もネット通販で購入可能(4/4 ページ)

[Masataka Koduka,ITmedia]
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生物多様性と生態系維持のために

 しかし、外来生物を利用した生物農薬には、周辺の生態系への影響が懸念されている。例えばこれまでの日本でも、生態系に大きな影響を与えた外来生物としてアメリカザリガニ、ヒアリ、帰化植物セイタカアワダチソウなどがある。また「司馬遼太郎 街道をゆく」41号の「明石海峡と淡路みち」には、昭和37年の天草から移入したタコにより、「いま魚棚に載っかっているタコは、むかしの明石ダコの子孫では、どうやらないらしい」(原文ママ、同書より引用)とも書かれている。

 さて現在は、日本でも生物農薬としててんとう虫をAmazon.co.jpなどで海外から購入できる。実際に購入している人もいるようだ。だがこういった生物農薬販売ビジネスにおいては、売り手も、買い手も、生態系への影響に十分に配慮する必要があるだろう。

永井さん 「生物多様性は単純な話ではなく、生物農薬としても、てんとう虫であればなんでも良いわけではありません。実はドイツ国内でも、日本に自生するナミテントウが拡大しており問題になっています」

 生態系の維持は、個人の課題であると同時に、社会の課題でもある。近年は各国でも、生物のほか植物の輸入/輸出規制が厳しくなっている。無農薬シード(鳥のエサ)、天然素材の鳥用品等をインターネット販売するドイツの会社【とりきち横丁】を経営するシシイ家原弥生さんは、ここ数年、ドイツと日本の輸入/輸出規制の大きな変化により、日本への商品発送業務を、大幅に変更せざるを得なくなった。ドイツから日本の顧客へ、ダイレクトに穀物商品を発送できなくなったためだ。

家原さん 「緊急で大幅な業務改革を行う必要があり、『倒産するかもしれない』と思いました。役所の担当者へ説明を求めたところ、『鳥の餌を始めとする輸入規制強化はグローバリズムに基づいて行われており、植物を仲介した害虫の拡散という生態系への影響を懸念したもの』との回答がありました。当然、生物農薬以外の昆虫などの取引も、同じ観点から規制強化が進むのではないかと思われます」

 化学農薬は使いたくないという意識の広がりから注目されつつある生物農薬販売ビジネス。しかし、その浸透のためには、生態系へのさらなる配慮が必要となる。ドイツで実際にてんとう虫をインターネット購入した永井さんはこう語った。

永井さん 「例えば夏に蚊が多い環境というのは、ボウフラが住める場所は多いのに、それを食べる天敵がいないというケースが多いです。つまりその環境は、生物多様性のバランスが崩れていると言えると思います。私が庭で行ったてんとう虫によるアブラムシの駆除例のように、生物多様性のバランスを尊重することで、身近な問題の多くを解決できるのではないと考えています」



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