仮想通貨はネット広告を変えるか? Webを見るだけで仮想通貨をもらえるブラウザ Brave(3/4 ページ)

» 2020年07月31日 15時29分 公開
[斎藤健二ITmedia]

仮想通貨BATで報酬を受け取ることの意味

 広告を見たユーザーが報酬を仮想通貨で受け取ることの意味はなんだろうか。仮想通貨の特徴として、ユーザー登録不要、銀行口座などとのひも付けも不要、そして1円未満の少額のやりとりも可能だ。

 Braveでは広告掲載機能だけでなく、ユーザーがお気に入りのWebサイトにチップを送って支援する機能も用意している。これにより、クリエイターはユーザーにコンテンツを直接販売することもできる。単品のコンテンツの販売だけでなく、毎月定額を支払うサブスクリプションの仕組みも用意しており、クリエイターやメディア企業は、従来よりも手軽に直接収入を得られる仕組みだ。

 ネットメディアの多くは、「デジタルに移行すると求められるのがPVになってしまう」(マガジンハウスのマーケティング局宣伝プロモーション部の永田滋友氏)ことを懸念しており、コンテンツの質自体を収益化する方法を模索している。世界のメディア企業の多くが、ネット広告からサブスクリプションへの移行を模索しているのは、これが理由だ。

 一方で、既存の決済システムを使ったサブスクリプションは、クレジットカードや銀行口座などを使うため、手続きが煩雑で手数料もかかり、気軽な少額決済が難しいという課題を抱えている。技術的には、仮想通貨を使った支払いはこれらを解決でき、うまく普及するならメディア企業にとっても福音だ。

bitFlyerがBraveとBATのウォレットを共同開発

 一方で仮想通貨特有の問題もあった。日本においては、資金決済法の関係で広告を視聴しても仮想通貨BATを配布することができず、その擬似的なポイントに当たるBAPを付与していた。

 今回、仮想通貨取引所を運営するbitFlyerは、Braveのブラウザで利用できるBATのウォレットを共同開発することを発表した。Braveの嶋瀬氏は、次のように期待を話した。

 「bitFlyerと提携することで、BAPではなくBATを配れることになる。広告を見たり、アンケートに答えたりするとBATをもらえる。もらったBATの使い方としては、(bitFlyerの取引所で)他の仮想通貨に替えたり、メディアの記事を買ったり、投げ銭をしたり、ECにも使える。さらにbitFlyerでBATを追加購入いただき利用できるようになる」

Brave Software Asiaの嶋瀬宏社長と、bitFlyerの三根公博社長

 bitFlyerは4月に取引所でBATの取り扱いを開始している。11月に予定しているBATのウォレットが稼働すれば、Braveブラウザで獲得したBATは、bitFlyerのアカウントに反映される仕組みだ。

 同社社長の三根公博氏は、「ブラウジングするだけで仮想通貨をもらえる。自然とBATが貯まり、結果として日常のコンテンツや物品の購入、支払いに使えるかもしれない。ユーザーが意識することなく、仮想通貨というテクノロジーとBraveによって、新しい価値を提供できるのではないか」と、Braveとの提携価値を述べた。

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