クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向

GRヤリスで「モータースポーツからクルマを開発する」ためにトヨタが取った手法池田直渡「週刊モータージャーナル」(1/4 ページ)

» 2020年08月17日 07時00分 公開
[池田直渡ITmedia]

 GRヤリスについては書くべきことが多過ぎる。ちょっと整理してみよう。

  • 車両の成り立ち
  • 製造方法の革新
  • 基本的な走り
  • 融通無碍(むげ)な特性

 さて、これを果たして全部詰め込めるだろうか?

「トヨタのスポーツカーを取り戻したい」。GRヤリスの公式サイトでは、豊田章男社長がそう思いを記している

車両の成り立ち

 さてヤリスというクルマは、「モータースポーツからクルマを開発する」というトヨタの新たなコンセプトから生まれている。これはGRだけの話ではなく、ヤリス全体の話だ。

 これまで、TNGAではボディ剛性を高めることを「もっといいクルマ」づくりの手法のひとつとして採用してきた。かつてのグズグズだったトヨタ車のボディ剛性から考えれば、それは大きな進歩であり、歓迎すべき話だと思う。なのだが、「ボディ剛性が足りないから上げる」という手法だけでの伸び代は、割とすぐに使い果たしてしまった。硬くすれば重くなる。どこまでも重くして硬くするのは非合理である。

 ということで、トヨタは硬くする部位を選別し始めた。「もっといいクルマ」に効く部分とあまり効かない部分。それを往年のWRC4連覇ドライバーである大御所トミ・マキネンと協力しながら解明していった。同時に「しなやかさ」を持たせる部位の必要性にも気づいた。

 驚くことにそういう研究の場には開発のメンバーだけでなく、製造部門のメンバーも参加している。言うまでもないが、作り方そのものが量産にフィードバックできなければ、ラリーショップが作るワンオフカーと同じことになってしまう。モータースポーツの世界のやり方に準拠しつつ、100万台作れる方法を見つけることこそが、この開発の大きなテーマである。

 その成果がヤリスである。どういうものになったのかは、過去に記事を書いているのでご参照いただきたい。

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