GRヤリスについては書くべきことが多過ぎる。ちょっと整理してみよう。
- 車両の成り立ち
- 製造方法の革新
- 基本的な走り
- 融通無碍(むげ)な特性
さて、これを果たして全部詰め込めるだろうか?
「トヨタのスポーツカーを取り戻したい」。GRヤリスの公式サイトでは、豊田章男社長がそう思いを記している
さてヤリスというクルマは、「モータースポーツからクルマを開発する」というトヨタの新たなコンセプトから生まれている。これはGRだけの話ではなく、ヤリス全体の話だ。
これまで、TNGAではボディ剛性を高めることを「もっといいクルマ」づくりの手法のひとつとして採用してきた。かつてのグズグズだったトヨタ車のボディ剛性から考えれば、それは大きな進歩であり、歓迎すべき話だと思う。なのだが、「ボディ剛性が足りないから上げる」という手法だけでの伸び代は、割とすぐに使い果たしてしまった。硬くすれば重くなる。どこまでも重くして硬くするのは非合理である。
ということで、トヨタは硬くする部位を選別し始めた。「もっといいクルマ」に効く部分とあまり効かない部分。それを往年のWRC4連覇ドライバーである大御所トミ・マキネンと協力しながら解明していった。同時に「しなやかさ」を持たせる部位の必要性にも気づいた。
驚くことにそういう研究の場には開発のメンバーだけでなく、製造部門のメンバーも参加している。言うまでもないが、作り方そのものが量産にフィードバックできなければ、ラリーショップが作るワンオフカーと同じことになってしまう。モータースポーツの世界のやり方に準拠しつつ、100万台作れる方法を見つけることこそが、この開発の大きなテーマである。
その成果がヤリスである。どういうものになったのかは、過去に記事を書いているのでご参照いただきたい。
- ヤリスのトレードオフから考える、コンパクトカーのパッケージ論
ヤリスは高評価だが、満点ではない。悪いところはいろいろとあるが、それはパッケージの中でのトレードオフ、つまり何を重視してスペースを配分するかの結果だ。ヒューマンインタフェースから、なぜAピラーが倒れているかまで、コンパクトカーのパッケージに付いて回るトレードオフを、ヤリスを例に考えてみよう。
- ヤリスGR-FOURとスポーツドライビングの未来(後編)
今回のGRヤリスでも、トヨタはまた面白いことを言い出した。従来の競技車両は、市販車がまず初めにあり、それをレース用に改造して作られてきた。しかし今回のヤリスの開発は、始めにラリーで勝つためにどうするかを設定し、そこから市販車の開発が進められていったというのだ。
- ヤリスGR-FOURとスポーツドライビングの未来(前編)
トヨタでは、このGRヤリスを「WRCを勝ち抜くためのホモロゲーションモデル」と位置づける。AWSシステム「GR-FOUR」を搭載したこのクルマは、ハードウェアとしてどんなクルマなのか。そして、乗るとどれだけ凄いのだろうか。
- ヤリスの何がどう良いのか?
ヤリスの試乗をしてきた。1.5リッターのガソリンモデルに約300キロ、ハイブリッド(HV)に約520キロ。ちなみに両車の燃費は、それぞれ19.1キロと33.2キロだ。特にHVは、よっぽど非常識な運転をしない限り、25キロを下回ることは難しい感じ。しかし、ヤリスのすごさは燃費ではなく、ドライバーが意図した通りの挙動が引き出せることにある。
- GRのコペンとダイハツ・コペン
日本のスポーツカーの中で、おそらく実力が最も侮られているのはダイハツ・コペンではないか? 筆者は以前からそう思っている。出来上がった2代目コペンは、クローズドコースでゼロカウンタードリフトができるような見事なバランスだった。山道を気持ちよい速度で走っても、ステアリングのインフォメーションが豊富で楽しい。こういうクルマが侮られている内は、日本の自動車文化もまだまだだと思う。
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