クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向
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» 2020年04月27日 07時13分 公開

池田直渡「週刊モータージャーナル」:ヤリスのトレードオフから考える、コンパクトカーのパッケージ論 (1/6)

ヤリスは高評価だが、満点ではない。悪いところはいろいろとあるが、それはパッケージの中でのトレードオフ、つまり何を重視してスペースを配分するかの結果だ。ヒューマンインタフェースから、なぜAピラーが倒れているかまで、コンパクトカーのパッケージに付いて回るトレードオフを、ヤリスを例に考えてみよう。

[池田直渡,ITmedia]

 さて、先週の記事では、ヤリスが高評価である最大のポイントはどこかという話を書いた。それはまた、TNGAと「もっといいクルマ」によるトヨタ車の再定義であり、多分究極的にはシャシー技術だと結論した。

 ただし、クルマの基本がシャシーであったとしても、それが全てでないことは自明である。今回はそれ以外の部分について書き進めてみたい。

Bセグメントのゲームチェンジャーといえるヤリスだが、指摘すべき部分はある

ペダルのオフセットはまだ改善できる

 まずはヤリスの悪いところから。ヤリスの最大の欠点はペダルオフセットだ。ヴィッツに比べれば随分と改善されたけれど、このクラスで一番ポジションが正しいマツダ・デミオ(Mazda2)と比べると、まだ修正しきれていない。程度でいうとスズキのスイフトと同じくらいだ。

 いうまでもないが、ハンドルとペダルは最も重要なヒューマンインタフェースであり、そこに瑕疵(かし)があるのは残念だ。そしてこれは多分直らない。

 ペダルがオフセットするのは、タイヤハウスにペダルが蹴られるからで、ではそのタイヤハウスのでっぱりは何が決めるのかといえば、パワートレインだ。FFの場合、エンジン+トランスミッション+タイヤのセットの中で、タイヤの位置が決まる。エンジンとタイヤの位置関係が固定されている以上、タイヤを前に出したければ、エンジンマウント位置を前に出すしかないが、それではクルマの基礎的な特性が変わってしまう。

 つまりエンジン+ミッション+タイヤという、パワートレインデザインそのものをリデザインして、エンジンに対してタイヤを前方に押し出さない限り、タイヤハウスの位置は改善できない。それはパワートレインの再設計を意味する。

 トヨタの社内でも、タイヤを前に出すべきという議論はあったようだが、なぜかそうなっていない。しかもエンジンもトランスミッションもTNGA世代の新しいもの。つまり、もしトヨタがこれをやり直す気持ちになったとしても、改善は次世代のパワートレインが登場するまで待たなくてはならない。

 レイアウトには利害得失があるのは当然なのだが、他の何よりも「人間中心」は重要なのではないか? そこは妥協させるべき要素ではないと思う。

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