さてここからパッケージ論が始まる。先週の記事についたコメントで、「なんでこんなにAピラーが倒れているのか?」という疑問があったので、それを軸に解説してみよう。
まず、AセグとBセグは、先進国用と途上国用では商品企画が全く違う。先進国では、コンパクトカーはコンパクトだから価値がある。つまりデカいクルマに乗りたくない人や、デカいクルマは他に持っている人が、日常のアシか、運転の苦手な家族用にコンパクトカーを買う。だから先進国用のコンパクトカーは、リヤシートが広々していることにあまり重きを置かない。むしろデザインやクオリティが高いことを優先する。
一方で途上国では、ホントはもっと大きくて立派なクルマが欲しいのだが、経済的な制約で大きなクルマは買えない。だから安価なクルマとしてコンパクトカーを買う。だから安ければ小さくなくても構わないというより、むしろ大きくて立派で安い方がいい。
という前提で見ると、なかなか面白い。スズキとダイハツのクルマはあまりAピラーが倒れていない。ハスラーやスイフト、ミラ・トコットやロッキーは昨今のクルマの中ではAピラーがしっかり立っている。つまり、広さを重視しているということだ。スズキはいうまでもなく、インドがメインマーケットだし、ダイハツはトヨタアライアンスの中で新興国マーケットを担う役割を与えられている。
Bセグメントにおいて、ピラーが寝ている代表はヤリスとMazda2が挙げられる。これらのクルマは、先進国での需要を狙っている。だからクーペライクなスタイリッシュさを求めているのだろうと想像される。
- ヤリスの何がどう良いのか?
ヤリスの試乗をしてきた。1.5リッターのガソリンモデルに約300キロ、ハイブリッド(HV)に約520キロ。ちなみに両車の燃費は、それぞれ19.1キロと33.2キロだ。特にHVは、よっぽど非常識な運転をしない限り、25キロを下回ることは難しい感じ。しかし、ヤリスのすごさは燃費ではなく、ドライバーが意図した通りの挙動が引き出せることにある。
- ヤリスGR-FOURとスポーツドライビングの未来(後編)
今回のGRヤリスでも、トヨタはまた面白いことを言い出した。従来の競技車両は、市販車がまず初めにあり、それをレース用に改造して作られてきた。しかし今回のヤリスの開発は、始めにラリーで勝つためにどうするかを設定し、そこから市販車の開発が進められていったというのだ。
- ヤリスGR-FOURとスポーツドライビングの未来(前編)
トヨタでは、このGRヤリスを「WRCを勝ち抜くためのホモロゲーションモデル」と位置づける。AWSシステム「GR-FOUR」を搭載したこのクルマは、ハードウェアとしてどんなクルマなのか。そして、乗るとどれだけ凄いのだろうか。
- ヤリスとトヨタのとんでもない総合力
これまで、Bセグメントで何を買うかと聞かれたら、マツダ・デミオ(Mazda2)かスズキ・スイフトと答えてきたし、正直なところそれ以外は多少の差はあれど「止めておいたら?」という水準だった。しかしその中でもトヨタはどん尻を争う体たらくだったのだ。しかし、「もっといいクルマ」の掛け声の下、心を入れ替えたトヨタが本気で作ったTNGAになったヤリスは、出来のレベルが別物だ。
- ヴィッツ改めヤリスが登場すると、世界が変わるかもしれない話
TNGAの最後のひと駒であるGA-Bプラットフォームが、今回、ヴィッツの後継車となるヤリスに導入される。筆者は15年のTNGA発表まで、トヨタのクルマをほとんど信用していなかった。TNGA以前と以後ではもう別の会社の製品だと思えるくらいに違う。いまやTNGA世代でないトヨタ車を買うのは止めるべきというのが筆者の偽らざる感想だ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.