クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向

ヤリスのトレードオフから考える、コンパクトカーのパッケージ論池田直渡「週刊モータージャーナル」(3/6 ページ)

» 2020年04月27日 07時13分 公開
[池田直渡ITmedia]

試乗で分かったヤリスの美点

 クルマにとって重要なポイントの一つはシートである。ヤリスのシートはかなり良い。国産最良の一つに数えるのは無理があるが、控えめにいっても平均値よりだいぶ上。美点として数えていい出来だ。

 レイアウトを除いたパワートレイン評価も素晴らしい。1.5ガソリンモデルでさえ、実測値でリッター当たり19.1キロを走った。フィール的には高圧縮エンジンらしい粒立ち感があり、微小な踏み込みに対するエンジンのレスポンスは素晴らしい。エンジン自体の回り方はドライでさっぱりした感じ。ヌルリとした艶めかしさは感じないが、現在の高効率ガソリンエンジンは全体にこういうフィールのものが多い。

 多分、高圧縮比、パワー空燃比の排除、点火の遅角を行わない制御などが相まって、生み出しているフィールだと思われる。良くも悪くも操作に対してのツキ感が直線的でタメがない。パワフルでレスポンスが良く、しかも燃費が前の世代のハイブリッド(HV)に近い。

1.5リットル直列3気筒直噴のダイナミックフォースエンジン

 HVはどうかいえば、こちらは驚異の実測値33.2キロ。バッテリーへの電流の出し入れ最大値が引き上げられたおかげで、必要な時には、従来よりモーター出力を上げることができ、俊足といえる動力性能を実現している。フィールや扱いやすさも含めて、Bセグメントのパワートレインとして最良のユニットだと思う。

 本当はここでコンパクトカーのパッケージ論を書き始めたいのだが、ちょっと箸(はし)休め的に自動駐車システムのことに先に触れたい。

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