クルマにとって重要なポイントの一つはシートである。ヤリスのシートはかなり良い。国産最良の一つに数えるのは無理があるが、控えめにいっても平均値よりだいぶ上。美点として数えていい出来だ。
レイアウトを除いたパワートレイン評価も素晴らしい。1.5ガソリンモデルでさえ、実測値でリッター当たり19.1キロを走った。フィール的には高圧縮エンジンらしい粒立ち感があり、微小な踏み込みに対するエンジンのレスポンスは素晴らしい。エンジン自体の回り方はドライでさっぱりした感じ。ヌルリとした艶めかしさは感じないが、現在の高効率ガソリンエンジンは全体にこういうフィールのものが多い。
多分、高圧縮比、パワー空燃比の排除、点火の遅角を行わない制御などが相まって、生み出しているフィールだと思われる。良くも悪くも操作に対してのツキ感が直線的でタメがない。パワフルでレスポンスが良く、しかも燃費が前の世代のハイブリッド(HV)に近い。
1.5リットル直列3気筒直噴のダイナミックフォースエンジン
HVはどうかいえば、こちらは驚異の実測値33.2キロ。バッテリーへの電流の出し入れ最大値が引き上げられたおかげで、必要な時には、従来よりモーター出力を上げることができ、俊足といえる動力性能を実現している。フィールや扱いやすさも含めて、Bセグメントのパワートレインとして最良のユニットだと思う。
本当はここでコンパクトカーのパッケージ論を書き始めたいのだが、ちょっと箸(はし)休め的に自動駐車システムのことに先に触れたい。
- ヤリスの何がどう良いのか?
ヤリスの試乗をしてきた。1.5リッターのガソリンモデルに約300キロ、ハイブリッド(HV)に約520キロ。ちなみに両車の燃費は、それぞれ19.1キロと33.2キロだ。特にHVは、よっぽど非常識な運転をしない限り、25キロを下回ることは難しい感じ。しかし、ヤリスのすごさは燃費ではなく、ドライバーが意図した通りの挙動が引き出せることにある。
- ヤリスGR-FOURとスポーツドライビングの未来(後編)
今回のGRヤリスでも、トヨタはまた面白いことを言い出した。従来の競技車両は、市販車がまず初めにあり、それをレース用に改造して作られてきた。しかし今回のヤリスの開発は、始めにラリーで勝つためにどうするかを設定し、そこから市販車の開発が進められていったというのだ。
- ヤリスGR-FOURとスポーツドライビングの未来(前編)
トヨタでは、このGRヤリスを「WRCを勝ち抜くためのホモロゲーションモデル」と位置づける。AWSシステム「GR-FOUR」を搭載したこのクルマは、ハードウェアとしてどんなクルマなのか。そして、乗るとどれだけ凄いのだろうか。
- ヤリスとトヨタのとんでもない総合力
これまで、Bセグメントで何を買うかと聞かれたら、マツダ・デミオ(Mazda2)かスズキ・スイフトと答えてきたし、正直なところそれ以外は多少の差はあれど「止めておいたら?」という水準だった。しかしその中でもトヨタはどん尻を争う体たらくだったのだ。しかし、「もっといいクルマ」の掛け声の下、心を入れ替えたトヨタが本気で作ったTNGAになったヤリスは、出来のレベルが別物だ。
- ヴィッツ改めヤリスが登場すると、世界が変わるかもしれない話
TNGAの最後のひと駒であるGA-Bプラットフォームが、今回、ヴィッツの後継車となるヤリスに導入される。筆者は15年のTNGA発表まで、トヨタのクルマをほとんど信用していなかった。TNGA以前と以後ではもう別の会社の製品だと思えるくらいに違う。いまやTNGA世代でないトヨタ車を買うのは止めるべきというのが筆者の偽らざる感想だ。
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