クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向

ヤリスの何がどう良いのか?池田直渡「週刊モータージャーナル」(1/5 ページ)

» 2020年04月20日 07時10分 公開
[池田直渡ITmedia]

 ヤリスの試乗をしてきた。1.5リッターのガソリンモデルに約300キロ、ハイブリッド(HV)に約520キロ。ちなみに両車の燃費は、それぞれ19.1キロと33.2キロだ。毎度のことだが、筆者の運転はかなり大人しいので、誰が乗ってもこの燃費がでるとはいわないけれども、格別に工夫した低燃費運転ではない。気をつければ誰でも出せる燃費だと思う。

トヨタの新世代コンパクトシャシーである、GA-Bプラットフォームの第一弾として登場したヤリス。先代にあたるヴィッツは、欧州ではすでにヤリスという名で親しまれてきていたが、この世代でグローバルに呼称が統一された

ハイブリッドの新たな境地

 特にHVは、よっぽど非常識な運転をしない限り、25キロを下回ることは難しい感じ。先代(30形)までのプリウスが、あれだけドライバビリティを犠牲にして絞り出して、それでも燃費が20キロ少々だったことを思うと、隔世の感がある。後述するが、ヤリスの1.5HVは、パワートレーンのフィールとしてかなり上等なものになっていて、Bセグ実用車としては十分速いし、レスポンスもリニアリティも高い。上等な運転感を持たせながらこの燃費だというところがまずすごい。

 数値についての評価は、まあ皆さんにも十分伝わっているとは思うが、控えめにいって驚異的だと思う。

 ちなみに、HVはもう何やら面白いことになっている。このくらいの数値になると、高速巡航で燃費が伸びるとは限らなくなった。むしろ80キロ定速で走っていても、瞬間燃費計を見ていると燃費が落ちていく時もある。おおよその着地ラインは33キロ。ここを基準に落ちたり上がったりする。

2つのベゼルに挟まれたマルチインフォメーションモニターで、燃費を確認することができる。この数字は多分ほぼピーク値だが、34.6キロ/リッターと読める

 もちろん、都内の低速なストップ&ゴーではさすがにダウンするのだが、高速道路よりも、むしろ郊外の60キロ区間などで、たまに減速を含む運転をしている時の方が燃費は伸びる印象だった。何というかちょっとしたパラダイムシフトである。

 もともと、HVの燃費低減の理屈は、減速時のエネルギー回収ができるからだ。完全に一定負荷で淡々と走る時には、HVシステムが活躍する場面がほぼないわけだから、加減速が伴う状態の方が燃費が良いのは理にかなっている。なのだが、今まではそんな理屈通りにはならなかった。ヤリスのHVシステムは初めて、結果が理屈通りになる領域にたどり着いたということでもある。

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