では、「要するにヤリスは燃費がすごい」ということでいいのかというとそうではない。運転フィールそのものが、先代であるヴィッツとは比較にならないくらい進化しているし、何より「もっといいクルマ」の目指す先が明らかに変わってきている。
具体的にはリファレンスが違う。ヴィッツはとにかく鈍感に仕立てられていた。それは鈍感であることが安全につながる、という思想を背景にしていたように思う。しかしヤリスはそこが違う。ドライバーが意図した通りの挙動が引き出せること。その上で、リスキーな場面で挙動がトリッキーにならない仕立てになっている。今回は公道試乗なのでギャンギャンシゴくような走り方は一度もしていないけれども、過去にプロトタイプをクローズドコースで2回テストしているので、その領域の挙動は十全にチェックしてある。
例えば、150キロオーバーからの、急制動を掛けながらハンドルを切り込んでいくような場面でも、リヤタイヤがグリップを放棄しそうな気配はない。ペダルの踏み込み速度が速いと、アシストが効いて、ドライバーが意図していないフル制動モードに入ったりするのだが、わずかに振られるものの、それでも挙動そのものが不安定になったりはしない。
弱い上り勾配のコーナーを全開で加速しながら登って、頂上で曲がり率がキツくなるような嫌な場面でも、フロントタイヤのグリップを信用して、舵(かじ)を最後まで効かせることができる。少しアクセルを離してやるなり、軽くブレーキを舐(な)めてやるなりすれば、より確実に意図したラインに乗せることができる。
という次第で、シャシーは極めて高い能力を持っているのだが、その身のこなしはキレキレ系ではない。そこが、トヨタの目指す新たな「もっといいクルマ」の一番特徴的な部分である。
ヤリスGR-FOURとスポーツドライビングの未来(後編)
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ロードスターの改良とスポーツカー談義Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
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