クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向

ヤリスの何がどう良いのか?池田直渡「週刊モータージャーナル」(3/5 ページ)

» 2020年04月20日 07時10分 公開
[池田直渡ITmedia]

 高負荷域でのハンドリングの仕立ては、一般的にざっと3種類ある。1つ目は、限界に近い所に追い込んでいくと、どんどん身ごなしがシャープになって、スリリングな面白さを楽しめるクルマ。例えばジャガーは割とそうだし、ヤリスのライバルの中でいえば、スズキのスイフトがそちら組だと思う。

 反対に、追い込めば追い込むほど挙動がだらしなくなっていって、やる気が萎えるクルマ。車種とグレードによるが、フォルクスワーゲンはこちら側の印象が強い。プロボックスもこれだし、ヴィッツは明確にこれの代表というわけではないにせよ、どこに入るのかといわれればこのグループだったと思う。

 念のためにいうが、これがダメなクルマを意味するのかと言えば必ずしもそうではない。仕立てによっては、そのダルになった領域を安心してシゴき倒すという使い方もできる。挙動はアンダー方面にしか崩れないので、それを見越してグイグイいけるのだ。

 最後の1つは、どこまで行ってもリニアであることを手放さない系統。オーバーステアに転じない安心感を持ちながら、弱アンダーに終始して、どこまでも自然に走れること。この代表が今回のヤリスであり、一足先にそれを目指していたのはマツダのデミオ(Mazda2)だと思う。

外見も悪くない。ヴィッツに散見された、安っぽさや間抜けな部分は無くなった。近くで見ると少し力んだディティールの圧を感じるが、こうして大きな景色の中に置いて違和感がなく、きちんと存在感を示すのは立派

 なので、高負荷域でシャープになっていくタイプを求める人には、少し物足りないかもしれないが、筆者にいわせれば、Bセグメントのハンドリングとしてはこちらが王道であり、高い見識と技術に裏打ちされたクルマだといえる。

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