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» 2020年08月25日 14時50分 公開

星暁雄「21世紀のイノベーションのジレンマ」:TikTokがトランプ政権を訴えた理由 (1/4)

トランプ政権がTikTokを追い詰めるのに用いたツール、TikTok側の反撃、そして過去にTikTokの「悪さ」とされてきた出来事などを検討していく。しかしトランプ政権のやり方は「ずさん」であり、TikTok側に反論、反撃の余地を与えている。さらに、トランプ政権が出した命令には合衆国憲法違反の疑惑も出てきた。TikTokが米国資本に買収されることが、既定路線となっているように報じている記事も見かけるが、それはどうだろう。現時点で先はまだ読めないと筆者は考えている。

[星暁雄,ITmedia]

 TikTokは、ティーンエイジャーらが踊ったり歌ったりおどけてみせる短い動画を共有して楽しむスマートフォンアプリだ。ノリが軽く、若者にウケることがこのアプリの持ち味である。そのアプリに対して米トランプ政権は「安全保障上の脅威がある」と圧力をかけ、事業撤退か事業売却かと迫っている。一方のTikTok側も黙っていない。反論を公表し、そして8月24日に米国政府を訴えたのである。

 今回の記事では、トランプ政権がTikTokを追い詰めるのに用いたツール、TikTok側の反撃の内容、そして過去にTikTokの「悪さ」とされてきた出来事などを検討していく。

 先に結論を述べる。トランプ政権のやり方は「ずさん」であり、TikTok側に反論、反撃の余地を与えている。さらに、トランプ政権が出した命令には合衆国憲法違反の疑惑も出てきた。

ティーンエイジャー向けアプリが米中対立のシンボルに

 TikTokは「ジェネレーションZ」と呼ばれる世代――いまどきのティーンエイジャーを引きつけるソーシャルメディアとしてユニークなポジションにいる。TikTokが見せてくれるものは、スマートフォンらしく縦位置で15秒ほどの短い動画だ。これを次々と表示する。だいたいの動画はダンス、歌、おふざけ、若者のちょっとしたアピール、ペット自慢など、どうということはない内容だ。

 数は少ないが、TikTokを使いこなす政治家もいる。米国のミネソタ州上院議員Matt Littele氏は、TikTokに自分の動画を投稿して14万フォロワー以上を集めた(内容は執務室でダンスをする動画などだ)。一方、17歳のFeroza Aziz氏の動画は「中国ウイグル自治区の人権侵害問題を調べて広めてほしい」と訴える内容で、90万以上の「いいね」、6万件以上のシェアを集める「バズ」(流行)を引き起こした。この動画をめぐる騒動については後述する。

米国ミネソタ州上院議員Matt Littele氏のTikTok動画

 TikTokのオーナー企業は、中国企業のByteDanceだ。ByteDanceは2017年、米国ですでに人気があった動画共有サービスmucisal.lyを買収、18年にTikTokと統合した。それ以来、TikTokは世界中で人気サービスとなっている。ユーザー数が一番多いインドでは、中国とインドとの国境紛争を受けて多くの中国アプリと共に禁止されてしまった(関連記事)。2番目にユーザー数が多い米国では、まさに今トランプ政権からの圧力を受けている。

TikTokへの圧力は大統領選挙に関連

 トランプ政権は以前から中国への強硬姿勢をとり続けてきた。その対立は「米中貿易戦争」とも呼ばれている。だが、TikTokが「対中国」のシンボルとなったのはここ2カ月ほどの出来事だ。

 20年6月20日、トランプ米大統領が開いた選挙集会で大量の空席が発生した。原因はTikTokユーザーによるボイコットだ。若者たちがTikTokで選挙集会のボイコットを呼びかけ、大量の申し込みをした上で欠席する行動を取ったためだった。事件との関連は定かではないが、トランプ政権がTikTokを目の敵にするようになったのはこれ以降との見方もある。

 トランプ大統領や政府高官からは、この7月以降「TikTokを禁止する」との発言が繰り返し出てくるようになる。米国では大統領選挙キャンペーンが始まっている。再選を目指すトランプ陣営がFacebookに掲載した広告には、「TikTokはあなたの電話のクリップボードを監視する」と書かれていたという(WSJの記事、クリップボード監視事件については後述する)。

 TikTok排斥はトランプ大統領の選挙キャンペーンの一部でもあるのだ。

 そのトランプ政権がTikTokを追い詰めるのに用いているツールを見ていこう。

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