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» 2020年08月25日 14時50分 公開

星暁雄「21世紀のイノベーションのジレンマ」:TikTokがトランプ政権を訴えた理由 (2/4)

[星暁雄,ITmedia]

トランプ政権は複数のツールで追い詰める

 トランプ政権は、複数の政策的ツールを使ってTikTokとそのオーナー企業ByteDanceを追い詰めようとしている。その内容はこうだ。

 (1) 米国企業への外資の投資を監視するCFIUS(対米外国投資委員会)の調査により、ByteDanceが買収した米国資産の売却を命じる。CFIUSはムニューシン米財務長官が率いており、国務省、国防省、商務省など16の政府省庁が参加する。8月14日の大統領命令では17年にByteDanceが買収したmusical.ly(現在のTikTok)の資産を90日以内に売却するよう命じた。最近、CFIUSは中国企業から米国企業への投資を取り消させる命令を何回も出している。

 (2) テロリストの預金封鎖などに用いる法律であるIEEPA(国際緊急経済権限法)を発動し、米国企業とTikTokとの間の経済活動封鎖を狙う。8月6日の大統領命令ではTikTokと、やはり中国資本のコミュニケーションアプリWeChatを名指しし、IEEPAなどを根拠に「45日後に特定の取引を禁止する」とした。

 (3)これら法律・制度の裏づけがあるツールとは別に、トランプ政権は「口先介入」をしばしば行っている。口先介入の具体例は、買収交渉に関するものだ。TikTokの買収交渉の企業の名前がいくつか取り沙汰されている。米Microsoftは公式に買収交渉をしていることを認めた。Twitterも交渉を行っていたと伝えられている。最近は米Oracleの名前が挙がった。

 異例なのは、トランプ大統領が発言でMicrosoftやOracleに言及していることだ。トランプ大統領は「(買収できるのは政府のおかげなのだから)Microsoftは政府にお金を支払うべきだ」「(Oracleの創業者)ラリー・エリソンはいい人物だ」と述べた。ビジネスへの政治の介入とも取れる発言だが、トランプ大統領はあまり気にしていないようだ。

TikTokはビジネス継続をアピール

 TikTok側もトランプ政権の圧力をただ耐えているわけではない。8月6日の大統領命令が出た翌日には、公式サイトに声明文を掲載して抗議した。

 8月17日には、TikTokは新たなWebサイトを開設した。目的は、TikTokへの「うわさや誤報」を訂正することだ。またTikTokに関する事実関係を明らかにするTwitterアカウントを新たに開設した。

 同じ8月17日、TikTokは音楽配信のUnitedMastersと提携し、TikTokを経由した音楽配信サービスを拡大すると発表。音楽アーティストにとってはティーンエイジャーに人気があるTikTokで曲が使われて流行することはヒットにつながる道となっている。TikTok側は政府の圧力の中でビジネス拡大の意思を見せた形だ。

 そして8月24日、TikTokは米国政府を提訴した(TikTokの声明New York Timesの記事)。IEEPA(国際緊急経済権限法)は「普通ではない異常な脅威」に対処する法律だが、TikTokへの適用には「懲罰的行動を正当化する根拠も手続きもない」と主張する。また対米外国投資委員会(CFIUS)が特定したとされる国家安全保障上の脅威は、「時代遅れのニュース記事」に基づいたものであり「TikTokが提供したユーザーデータの安全性を証明する文書には触れていない」と主張した。

 トランプ政権はあらゆるツールを使って圧力をかけているが、その内容はTikTokが言うように「事実を重んじていない」部分がある。そこでTikTok側は政府に抗議し、異議申し立てを行った。

 とはいえTikTok側にもいくつかの悪い評判がある。過去に問題となった出来事を見ていこう。

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