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“仮想伊勢丹”誕生、「リアル百貨店の弱み」克服へ 社内起業した男の夢VR空間に構築(1/4 ページ)

» 2020年08月28日 07時00分 公開
[山崎潤一郎ITmedia]

 極めて大真面目な挑戦だと知って少なからず驚いた、というのが取材後の偽らざる感想だった。1886年創業の老舗百貨店が仮想空間で開催されたマーケットに出店し、アバター(自分の分身キャラ)向けのファッションを販売。将来は、独自に仮想世界のプラットフォームを構築し、リアル店舗にも負けない事業に育てあげようという意気込みを感じたからだ。

photo VR空間に“仮想伊勢丹”を構築

 伊勢丹は、4月29日〜5月10日に開催された仮想空間のイベント「バーチャルマーケット4」に初出展した。三越伊勢丹ホールディングスの仲田朝彦氏(チーフオフィサー室 関連事業推進部 プランニングスタッフ)は、「VR空間の仮想店舗は、現在のリアルな百貨店が抱える課題を解決してくれる」と力説する。

 十数年前に、VR空間での生活体験を売りにする「Second Life」(セカンドライフ)が大手広告代理店主導のプロモーションで大きな話題になった。結局こちらは広告代理店の撤退で、今となっては人々の意識からフェードアウトした感があるのだが、当時セカンドライフに「進出」した企業の多くは、プロモーション目的のお付き合いの感覚でVRビジネスに望んでいたという。

 つまり、VRビジネスに対する本気度が希薄だった。だからこそ、伊勢丹の“まじめ”な取り組みに筆者は驚いた。当時「三越セカンドライフ店」が存在していた事実は、三越と伊勢丹が合併した今となっては味わい深いものがある。

何をどのような客に販売するのか

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