バフェットはなぜ今さら金鉱株に手を出したのか古田拓也「今更聞けないお金とビジネス」(1/3 ページ)

» 2020年08月28日 07時00分 公開
[古田拓也ITmedia]

 「投資の神様」として名高い米バークシャー・ハサウェイCEOのウォーレン・バフェット氏が、カナダにあるグローバル鉱山会社バリックゴールド社へ投資したことが今月半ばに明らかとなった。

2019年5月、米国ネブラスカ州オマハで開催されるバークシャー・ハサウェイの年次株主総会に現れたウォーレン・バフェット氏(写真 ロイター)

 バリックゴールド社は金価格の上昇を受けて株価を大きく伸ばしている。1年前の水準と比較しておよそ2倍、5年前の水準と比較すると5倍程度にまで株価が成長した。しかし、バフェット氏の本件における投資行動は、過去の彼の投資スタイルと矛盾するのではないかと懸念する声もある。

 というのも、バフェット氏は高名なバリュー投資家であり、これまで金への投資へ懐疑的なポジションを貫いていたからだ。2011年に同氏がバークシャーハサウェイ株主に送ったレター文書には、貴金属投資について次のように記されていた。

“neither of much use nor procreative”

(貴金属それ自体は)あまり役に立たず、配当を生まない

 そして、もう一点不可解な点があるとすれば、バフェット氏が得意としていた”安く買って、高く売る”戦略ではないように思える点だ。バリックゴールド社は金価格が過去最高値を更新したこともあって株価を順調に伸ばしている。つまりバリックゴールド社に投資をするということは、史上最高値の水準で間接的に金を購入することと同義だ。バリュー投資の考え方と異なるのではないかと思われるのではないだろうか。

 しかし、バフェット氏の金鉱株投資は、必ずしもバリュー投資家として矛盾しているわけではない。

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