純金価格の上昇が止まらない――。
金相場が史上初めて1グラム=7000円の節目を突破した。ここ10年の間、3500円から5000円のレンジでさまよっていた金相場は、コロナ禍による経済不安の高まりを背景に「有望な資金の逃避先」として人気が急上昇。金相場はわずか半年程度で一時7500円近辺にまで急騰した。
しかし、コロナ禍という事情を踏まえたとしても、足元の金相場はバブルに近い様相を示しており、注意が必要であると筆者は考えている。
その理由を、金よりも貴重な「白金(プラチナ)」と比較しながら確認したい。
そもそも経済不安が高まると、なぜ金の人気が高まるのだろうか。それは「価値の普遍性」にある。諸説あるものの、金の有史以来の採掘量は全体で50メートルプール約4杯分しか存在しないといわれている。希少な物質であり、その価値の高さは世界のあらゆる人々が認識している点で普遍的であるといえるだろう。
また、信用リスクがないことも大きい。現金・国債・株式といった金融商品にはいずれも中央銀行・国・企業といった「発行体」が存在しており、それらの信用度に応じて価値が上下する。その一方で、金には発行体が存在せず、サビたり腐ったりすることもないため、半永久的にその価値を維持できる。そう考えると「金自体の価値が上昇して金価格が上昇する」というよりも、「現金等の信用度が低下して価値が下がった結果、金が相対的に浮かびあがってくる」という表現の方がより本質的なのかもしれない。
プラチナは、先ほどの50メートルプールの例えにならえば、その総量は1杯分に到底及ばない。これまで人類が手にしたプラチナの総量は、このプールでかろうじて足首が浸かる程度、わずか7000トン程度にすぎないとされる。希少度だけで考えると、最低でも金の30倍以上となるはずのプラチナであるが、その価格は15年を境に逆転した。現在は価値と価格のねじれが発生している状況にある。そして、そのねじれはコロナ禍で過去最大レベルまで拡大しているのだ。
ここで注目すべきは、やはりコロナショックにおけるプラチナと金の価格かい離拡大にあるだろう。コロナショックでは、プラチナが当初は大きく下落したのに比べて、金は上昇基調を強めた。その理由をひも解く鍵が「産業需要」にある。
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