レシピ競争から脱却! 味の素が「体験」「共感」を発信する意味アフターコロナ 仕事はこう変わる(3/3 ページ)

» 2020年08月28日 07時00分 公開
[加納由希絵ITmedia]
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「みんなに受ける」から「潜在ニーズの発掘」へ

 味の素パークが持つ会員基盤や新規訪問者のデータ、SNSの反響、さらには他の部署が担当するECや消費者調査のマーケティングデータも組み合わせて、商品やサービスの開発に生かそうとしている。従来、味の素パークで得られるデータはターゲティング広告などに使うだけだったが、潜在的な消費者ニーズを発掘することを目的に、全社で一体となったデータ活用を目指すという。

 松本氏は「これまでは“みんなに受ける”商品が主流だったが、今後は小さなニーズに対応する商品を届けることも必要となる。事業の形をデジタルによって変えていかないといけない」と話す。

 そのために、消費者との接点となる味の素パークを中核メディアとして活用する。食の楽しさを発信しながらファンを増やし、その人たちの行動や意見から潜在ニーズを探る。そして、これまでにない商品やサービスの開発に生かしてもらう。そんな流れを描いている。

 活用するデータは、ログイン情報や閲覧したレシピ、来訪回数などのほか、Webアンケートの回答結果、今後積極的に開催するイベントやファンミーティングでの意見など、多岐にわたる。加えて、TwitterやLINEなど緩いつながりによって得られるデータもある。さらには、店頭キャンペーンや工場見学などリアルの接点から得られる、参加者の属性や意見・感想などのデータも組み合わせて分析する。「どういう人たちとどうつながっているのか可視化して、ファンの解像度を上げていきたい」と松本氏は説明する。

 新型コロナ感染拡大やそれに伴う行動の変化によって、多くの人が正確な情報や、生活を豊かにする情報をますます求めるようになった。主に小売店を通じて商品を届けてきた食品メーカーにとって、消費者との直接のつながりを強める機会と捉えることもできる。在宅需要の拡大を追い風に、共感してくれるファンを増やし、その一つ一つの声を会社全体の事業に生かす。サイトリニューアルをその第一歩と位置付けている。

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