サントリー食品インターナショナルの緑茶飲料「伊右衛門」が2020年春、大きく姿を変えた。04年の発売以来“最大のリニューアル”を経て、味も見た目も刷新。なかでも、特徴的だったボトルの形やラベルは、別の商品のように変更された。
新しくなった商品の販売は好調を維持している。4月のリニューアル後1カ月間の販売は、リニューアル前1カ月間と比べて2倍に伸びた。また直近では、6月の販売実績が前年同月比1.6倍。特に、コンビニに限定すると約2.5倍に伸びている。
実は、緑茶飲料として知名度が高い伊右衛門も、近年は販売が伸び悩み、“崖っぷち”の状態だったという。思い切ったリニューアルはなぜうまくいっているのか。ブランドのマーケティング責任者を務める、同社ブランド開発事業部の多田誠司氏は「一目で分かる緑色」をその理由に挙げる。
「そろそろ棚から落ちるのでは、という危機感があった」と、多田氏は振り返る。04年に京都の老舗茶舗「福寿園」との共同開発によって誕生し、大ヒットした伊右衛門も、競合商品やブレンド茶などとの競争にさらされ、近年は低迷。ブランド全体の販売数量は、18年、19年と2年続けて前年比5%減だった。
しかしこの数字は、好調を維持する特定保健用食品「特茶」など、派生商品を含めた実績だ。「本体」と呼ばれる通常商品の状況はさらに深刻だった。
本体の19年の販売実績は前年比1割減。リニューアル前の20年1〜3月には、前年同期と比べて2割も落ち込んだ。「特にコンビニでは、緑茶の主力ブランドの中でもビリが続いていた」(多田氏)。「棚から落ちる」は差し迫った危機感だった。
質の高い素材や製法を採用しており、CMの好感度も高い。それなのに、なぜ売れていないのか。ゼロから見直してみると、「伝わっていない」という課題が見えてきた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PRアクセスランキング