パッケージ刷新で販売が2倍に! 再起を狙う「伊右衛門」が貫いた緑色「一目で分かる」を追求(2/3 ページ)

» 2020年07月21日 07時00分 公開
[加納由希絵ITmedia]

「きれいな緑色」一点突破のパッケージ

サントリー食品インターナショナル ブランド開発事業部の多田誠司氏

 伊右衛門の最も重要な価値は「急須で入れたようなお茶」の味わいを楽しんでもらうことだ。しかし、競合商品も「急須のお茶」を打ち出していることから、近年は差別化のために、他の伝えたい要素を加えてパッケージなどを作っていた。

 例えば、19年のリニューアルでは「抹茶の甘み」を大きく打ち出したほか、情緒的なCMやパッケージによって「ほっとする」という価値を訴求。しかし、消費者には伝わらず、不振から脱することはできなかった。

 そこでもう一度、“急須で入れたてのようなお茶”という「真ん中の価値」(多田氏)を見直して、中味を開発。一番茶の比率を最大にして香りとうまみを引き出したほか、焙煎技術や抽出方法も改良した。その過程で、徐々に重視するようになっていったのが「緑色」だ。

 ヒントになったのは、19年に「天然水」ブランドから発売した新商品「天然水 GREEN TEA」。ヒット商品にはならなかったものの、発売時にはきれいな緑の液色が注目された。「これまでの緑茶飲料は茶色っぽい色が多かった。きれいな色なら見ただけで変化が分かる」(同)。伊右衛門でも、味や香りを追求する中で、液色を鮮やかな緑に近づける技術も確立できたことから、「入れたてのような緑色」の“一点突破”で打ち出すことを決めた。

 きれいな緑の液色を効果的に見せるためには、これまでのパッケージから大きく変える必要がある。従来は緑色のラベルがペットボトル全体を覆っていて、中味はほとんど見えなかった。

 そこで、ボトル全体を覆う形式のシュリンクラベルを、長さが短くてはがしやすいロールラベルに変更した。ラベルの面積を半分に減らし、中味がよく見えるようにしている。また、ボトル自体の形も変更。伊右衛門の特徴だった「竹筒」の形のボトルをやめた。

リニューアル前後の「伊右衛門」。ラベルやボトルの形状を変えた

 「伊右衛門のアイコンだった竹筒ボトルをやめていいか、という判断は難しかった」と多田氏は振り返る。ペットボトルの形状を変えるためには、工場の金型などの設備を全て入れ替えなくてはならない。大きな設備投資になるため、一度変えると簡単には元に戻せない。これまでのイメージを捨てる大きな決断だが、「初代の伊右衛門を作った責任者やデザイナーなど、みんなが後押ししてくれた」(多田氏)。04年当時、“新しさ”の象徴だった竹筒ボトルも、すでに誕生して15年以上経過している。思い切った変化が求められていた。

 そこで、従来とは全く異なる「お茶の色がきれいに見えること」を重視した考え方で、一からパッケージを作っていった。ボトルの形状だけでなく、ラベルの色によっても液色の見え方は異なる。棚に並んだ状態を想定し、光の当たり方などを研究した。「キャップとラベルで挟まれた部分が、最もきれいに見えるように、ラベルの色やボトルの形状を決めた」(同)という。

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