伊藤忠のファミマTOB成立、王者セブンに勝つ術はあるか“いま”が分かるビジネス塾(2/3 ページ)

» 2020年09月01日 08時00分 公開
[加谷珪一ITmedia]

セブンが「何もしない」であろう事情

 商社がコンビニとの一体化を進めるのは、どちらかと言うと商社側の都合によるところが大きい。コンビニを子会社にすれば、決算書上、コンビニが計上する利益を自社に取り込むことができる。また、自社が扱う商品を傘下のコンビニに卸しやすくなる。

photo 伊藤忠商事によるファミリーマートTOB完了のリリース(公式サイトより引用)

 これまでファミリーマートで扱っていた無印良品がローソンで販売されるようになったのは典型的なケースといってよい。無印良品を製造する良品計画はもともとセゾングループに属する企業で、ファミマとの関係が強かった。だがファミマが伊藤忠の子会社となり、一方、良品計画は三菱商事と資本関係を持った。結果として無印良品はファミマではなくローソンで売られるようになった。

 商社が持ってくる商品が、コンビニにとってベストなものであれば問題ないが、必ずしもそうとは限らない。商社と一体化するということは、商社のネットワークをフル活用できるメリットがある反面、系列商社以外の商品を扱いにくくなるというデメリットもある。こうした部分がもっとも顕著にあらわれるのが弁当などの総菜類である。

 加工食品は各社でそれほど大きな違いは生じないが、チェーンの特色がもっとも反映されるのは総菜類である。本来であれば、総菜を提供する企業に徹底的に競争させ、最も顧客ニーズに合ったものを調達することが小売店にとってベストな選択である。だが、仮に総菜類の調達先がある程度、資本関係で決まっているのだとすると、顧客本位の選択ができるとは限らなくなる。

 セブンは競合2社として比較して商品力が強いとされているが、その理由の1つは、どの商社とも中立の関係であることが大きい。セブンとしては今、確保しているアドバンテージを維持すればよいので、わざわざ商品の自由度を下げるという選択肢はあり得ないだろう。

 では、競合2社は商品力でセブンに追い付く術はないのだろうか。

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