「菅義偉新総理」の誕生がほぼ確定ということで、マスコミは連日のように「実はパンケーキ好き」なんて大盛り上がりしている。だが、そんなスガフィーバーの裏で、地元横浜で「菅案件」と呼ばれる超巨大プロジェクトがピンチにさらされているのをご存じか。
それは、「カジノ」である。実は菅氏のお膝元である横浜は、アベノミクスの成長戦略の目玉として進められていたカジノを含む統合型リゾート(IR)の「本命」として名前が挙がっていた。これにはいろいろな理由が語られているが、林文子市長が選挙協力などで菅氏に頭が上がらないことが大きい。政府や企業が安心してIRを進めるのは、自治体トップが反対に回らないことが絶対条件となる。小池百合子東京都知事のように選挙が近くなると突然、政府批判を始めるような自治体にIRを呼んでも、すぐに二転三転して新国立競技場や豊洲新市場のように迷走してしまうからだ。
その点、横浜の林市長は菅氏の思いのままに動くので何のリスクもない。そのため「横浜カジノ」は首都圏IRの大本命とされてきたわけだが、ここにきて先行きがかなり不透明になっているのだ。
9月5日、横浜市のIR誘致に反対する市民団体が、誘致の賛否を問う住民投票に向けて署名活動をスタート。さらに、10月からはIR誘致を進める林市長のリコールを目指す署名活動の開始も控えている。
不安要素は住民の反対だけではない。5月には、横浜誘致に名乗りをあげていた世界的IR企業、ラスベガスサンズが日本から撤退を表明。そこに加えて、7月に公表されるはずだった政府のIRに対する「基本方針」がコロナ危機で公表延期とされ、産経新聞の報道では「白紙」になってしまったという情報もある。つまり、今回のコロナ危機で「統合型リゾート」という政府の成長戦略そのものが暗礁に乗り上げてしまっているのだ。
苦境に立たされる観光業界に追い打ちをかけるような話をして心苦しいが、個人的にはこの大きな変化を前向きに捉えるべきではないかと考えている。
残念ながら、IRをつくれば外国人観光客がじゃんじゃんやってきてカネを落として、地域もチャリンチャリンという「皮算用」はもはやコロナ後の時代には通用しない。ワクチンができても完全にコロナを封じ込められるわけでもないし、またいつ新しいウイルスが出現しないとも限らないからだ。
だったら、このシビアな現実を政府も自治体も受け入れて、ここはスパッと「統合型リゾート」に見切りをつけた方がいい。むしろ、パンデミックのようなリスクにも強い、持続可能性の高い観光戦略へシフトする好機と捉えるべきだ。
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