「コロナでカジノは白紙」の今こそ、IRより“分散型リゾート”が必要な理由スピン経済の歩き方(2/5 ページ)

» 2020年09月08日 08時30分 公開
[窪田順生ITmedia]

お城や古民家で宿泊、コロナ時代の新しいスタイル

 そこで筆者が提案したいのは、「統合型リゾート」ならぬ「分散型リゾート」という考え方である。

 ご存じの方もいらっしゃるかもしれないが、京都、兵庫の篠山、福井の小浜など西日本を中心に「分散型ホテル」という業態が増えている。これは、地域内に点在する古民家や空き店舗、歴史的建造物などを再生して「客室」として利活用するというホテルで、「密」を避けつつも、他のホテルでは味わえないぜいたくな宿泊体験ができるということで、コロナ時代の新しい宿泊スタイルとして注目を集めているのだ。

 分かりやすいのが、愛媛県大洲市に7月にオープンした「大洲城キャッスルステイ」だ。再現された木造天守の大洲城での貸切宿泊に、雅楽等の伝統文化体験、重要文化財・臥龍山荘での御膳を味わうなど、どんな高級ホテルでもまねできない「殿様体験」ができる。また、その城下町に点在する分散型ホテル「NIPPONIA HOTEL 大洲 城下町」でも、歴史的価値の高い邸宅に泊まって、趣のある庭園を楽しめる。

「大洲城キャッスルステイ」では木造天守に宿泊できる(出典:バリューマネジメントのプレスリリース)

 そんな今、注目の「分散型ホテル」をさらにもう一歩進めて、地域にある自然、歴史的建造物、伝統文化、さらには劇場、運動競技場、果てはギャンブル場まで全てを「リゾート施設」として利活用していく、というのが筆者の考える「分散型リゾート」の姿である。

 例えば、地域内の古民家にチェックインをすると、そこには周辺で楽しめるさまざまなアクティビティーのメニューが置かれているのだ。自然豊かな山奥ならトレッキング、キャニオニング、ラフティングなど定番のアウトドアから、狩猟ツアーからのジビエ料理や、伝統文化体験など。海が近いところならば、マリンスポーツだけではなく、釣りや漁師体験などもできる。それらのアクティビティーに申し込むと、地域内で暮らしている近所の人がガイドとしてスマートモビリティや車で送迎をしてくれる。もちろん、地域内のレストランを訪れる際や、文化財などの観光名所を巡る際にも、ちゃんとこのような送迎やガイドがついている。

 さらに、地域内に劇場やシアターがある場合、その地域ならではの伝統芸能を上演してもいい。そういう施設がなければ、つぶれてしまったスナックやショーパブをリノベして昭和レトロなライブハウスや演芸場のような施設として蘇らせても面白いだろう。パチンコや競馬場というギャンブル施設も同様だ。例えば、任侠映画に登場する「賭場」のような雰囲気にリノベーションすれば、地域のギャンブラーを排除することなく、外国人観光客や日本人観光客というよそ者も楽しめるはずだ。

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