経理がリモートワークで苦労する点も、アンケートにより見えてきた。緊急事態宣言下で「ハンコ出社」が話題になったが、それよりも経理部門が困っていることがあった。それが、請求書や納付書が紙で送付されてくるということ。
紙で送られてくるだけでも大変なのに、今はPDFでまず送付され、追って紙がくるというパターンもある。デジタルデータと紙が混在すると、確認と管理作業が大きな負担になってくる。確認作業でミスをすれば、支払いミスも連鎖して起きてしまうだろう。実際に大手企業でも、リモートワーク下で二重払いのトラブルが発生しているという。
「テレワークで決算処理をしてミスをすると大変です。しかし、出社させて集団感染が発生しようものならさらに大変です。経理は基幹業務なので、全員入院してしまうと支払いが止まってしまいます。大手であっても、今のコロナ禍で支払いが止まると与信的にリスクのある会社と思われてしまいます。別の調査(「経理1000人に聞いた緊急事態宣言下における働き方と電子化推進に関するアンケート調査」ロボットペイメント)によると、経理部で転職を考えている人は3割以上に上るということで、人材が退職する可能性もあるでしょう」(森氏)
では、コロナ禍で経理部門を効率化するにはどうすればいいのだろうか。ヒントになるのは、海外の先進事例だという。森氏はクラウド事業を手掛けるアカマイテクノロジーズの日本法人立ち上げに関わり、12年間働いていた。米国本社にも何度も行っており、本社の経理が何をしているのかも詳しい。
外資系企業では、なんと15〜20年ほど前から、経費精算の確認作業の多くをインドで行っていると森氏は話す。アカマイテクノロジーズのようにインドオフィスがあればそこで、支社がない企業であればBPO(Business Process Outsourcing)に出しているそうだ。BPOにすれば、米国人の3分の1から5分の1ほどの人件費で、業務を消化できるという。
「インドには大型のBPO提供企業がたくさんあり、英語も通じますし、数学に関しては米国人よりも優秀です。今や、米国人のホワイトカラーが経費精算業務をするケースはほぼないと思います。もし突合業務などをやるとしても、米国人は嫌々やるでしょう。インド人は、『これはチャンス』と喜んでやるので、どちらに頼みますか、という話になるのです」(森氏)
このように経理BPOはアメリカで流行・進化した。日本のIT系BPO市場も2.5兆円市場で、その中でも経理のBPOに挑んだ会社はたくさんあった。しかし、「大手も含めて皆さん撤収されています」と森氏は話す。
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