対面による従来の営業方法が、コロナによって強制的にオンラインに移行した。では、コロナが収束したら元に戻るかといえば、それは疑問だ。代表の堀江氏は、「便利さをお互い知ってしまった。これは不可逆的な気がする」と話す。
出張も減り、顧客満足度も対面とそれほど変わらない。しかしZoom営業はメリットだけではない。訪問すると、1時間から1時間半ほど話していたが、Zoomでは話が40分程度で終わるようになった。
「訪問して面談すると世間話があって、要点を話すには2割くらいの時間。ところがZoomは要点だけになりがち。効率の追求という意味ではZoomだが、中長期的にはどうか」(堀江氏)
同社は、最初のポートフォリオを構成するときに売買手数料の一部を収益とするモデルで、その後の売買はほとんど行わず長期的なポートフォリオを作成する。そのため既存顧客からの収益は少なく、新規顧客の開拓が事業の生命線だ。富裕層は横のつながりも強く、顧客からの紹介が同社の重要な営業先となっている。
こうした紹介は、現在のところZoomでも件数はさほど変わらないという。ただ「リアルで会っているほうが、想いの部分は伝えやすい」と堀江氏は言う。
欧米でいうプライベートバンク的な、富裕層向けの資産運用サービスは国内でも大手証券会社が力を入れ始めている。ただし、そのサービス自体は従来と変わらない点も多い。「大手証券会社は、都度売買してもらって手数料をもらうビジネス。この手数料をどれだけ下げられるかが我々のバリュー」だと堀江氏は話す。
預け入れ金額2000万円以上が目安だが、同社を介して証券会社に注文を出すことで、手数料が優遇され、ネット証券を直接使うよりもコストが割安になる。富裕層中心とあって、提案するポートフォリオも保守的だ。投資先は債券を中心としており、コロナショックでも資産額は減ることはなかったという。
このところは金融教育や寄付のアドバイスにも力を入れている。完全ボランティアの社会貢献だが、ブランディングにもつながり、採用にもマーケティングにも役立っている。
「金融リテラシーの格差が日本はすごい。この格差を生かして、手数量の高い商品を売りつけるのが従来の証券会社のモデルだった。証券会社自身がよくなる必要もあるが、投資する人自身が金融リテラシーを身に着けないとこの構造は変わらない」
自身も大手証券会社出身である堀江氏は、このように日本の投資環境の未来を話した。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング