インタビュー
» 2020年09月24日 16時00分 公開

「変わらないといけないタイミング」:さくらインターネット、東京オフィス半減へ “眺めがいい最上階”も手放す、田中社長「リモート前提」の考え方 (1/3)

さくらインターネットが、2021年1月をめどに東京支社のオフィス(西新宿ビル)を半分以下に縮小する。コストカットが目的というよりは、業務を行うためだけの場からイノベーションを生むためのスペースに変える狙いがあるという。

[房野麻子,ITmedia]

 さくらインターネットが、東京支社のオフィス(西新宿ビル)を半分以下に縮小する。新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、在宅勤務が広まる中、空席が目立つオフィスの縮小、固定費の削減を検討している企業は少なくないだろう。さくらインターネットは9月現在、西新宿ビルの24階、28階、32階の半分、33階と全部で3.5フロアのオフィスを構えているが、2021年1月をめどに1.5フロアに縮小する。

 オフィスの内容も大きく変える。イベントを開催できるコミュニケーションスペースやディスカッションをしやすいミーティングルーム、インフラの検証環境が整ったラボルームなどを拡充する(改装完了の時期は未定)。コストカットが目的というよりは、業務を行うためだけの場からイノベーションを生むためのスペースに変える狙いがあるという。

 「半年前までの価値観では、オフィスは『社員が働きたい』と思うような情緒的な場所であり、経営者の成功のステータスシンボルでもありました。でも、それらを捨て去って自分自身が変わらないといけない、そういうタイミングなんだろうなと思います」──そう話すのは、さくらインターネットの田中邦裕社長。今回の縮小で、見晴らしがいい最上階のフロアも手放す。オフィス自体は必要だが、その役割を見直す必要があるという。

photo さくらインターネットの田中邦裕社長

 田中社長がこのように考える背景には、同社がコロナ禍に先立ち、リモートワークを導入した事情もある。総務部の中川幸造部長、ユウ昌日(チャンイル)氏、そして田中社長に、リモートワークへの移行の舞台裏、オフィスの在り方を聞いた。

リモートワークへスムーズに移行、成功の理由は「余白」

 さくらインターネットが働き方改革やリモートワークに取り組み始めたのは2016年のことだ。同年10月に「さぶりこ」(Sakura Business and Life Co-Creationの略)と呼ばれる社内制度を導入し、勤務時間や場所の制限を大きく緩和。社員が好きなタイミングでどこでも仕事ができるように、環境を整え始めた。

 17年には大阪本社のオフィスを移転。大阪オフィスでは、固定席を廃止してフリーアドレスを導入した。このとき、東京支社の社員も大阪本社に出張するうちに、場所を問わない働き方への抵抗感が薄れていったという。こうして、社内全体で新しい働き方が浸透し始めた。

 とはいえ、新型コロナが猛威を振るう以前は「正直、ほとんどの社員が出社していました」と中川氏は振り返る。外回りをする人が出社とリモートワークを組み合わせたり、デザイナーやプログラマーがリモートワークをすることはよくあったが、社内では一般的とはいえず、20年2月までは8割以上の社員が出勤していたという。

 しかし、コロナの影響で3月の出社率は23.6%、4月は7.2%、5月は8.6%と低く推移。緊急事態宣言が解除された後、6月時点でも10.8%と低いままだった。同社が6月に実施した社内アンケートでは、東京支社に毎日出社したいと回答した社員は2%程度。80%以上が、希望する出社頻度は「週1回以下」と回答した。

photo 解約予定の東京オフィスのフロア=さくらインターネット提供

 リモートワークがこうも深く浸透した背景には、さぶりこによって会社側の準備がある程度整っていたことが挙げられる。全社的に在宅勤務へ移行するとなると、VPNのキャパシティーが足りなくなるなど、設備の問題もしばしば出てくる。しかし、ユウ氏は「そういった懸念は管理チームにはありましたが、“余白を持って”設定していたので、実際にはうまくいきました」と話す。余白を持つ意識は、業務面でも設備面でも会社の方針として根付いているという。

 田中社長によると、この余白を持つ意識というのは「全てを切り詰めるとスループット(生産性)が悪くなるというメタファー」から来ている。「渋滞はクルマが多いからではなくて、車間距離を十分空けないから起きるといわれています。また、パズルゲームの『チクタクバンバン』では、空いている場所がなければ動かせません。たくさん仕事があって忙しくても、余白があればスループットが上がるという考え方です」(田中社長)

photo 自宅でリモートワーク中の社員=さくらインターネット提供

 個々人で在宅勤務の準備をしていた社員が多かったことも、リモートワークにスムーズに移行する要因になったと、中川氏はみている。

 「アンケートでは、約4分の3の社員が在宅勤務の準備をしていたと回答しています。その上で、在宅勤務で通常よりも業務をうまく遂行できた、通常と同じように業務を遂行できたという回答は、約3分の2を占めました」(中川氏)

 部門や個人で、家のどこで仕事をしたらいいか、何が必要かを考え、準備をしていた社員は在宅勤務へとうまく移行できた。さぶりこが始まってから3年以上がたち、リモートワークや在宅勤務を1度でも経験していた人が多かったことも功を奏した。

 ユウ氏は「働き方の変化でフリーアドレスも増えてきていて、従業員の端末はノートパソコンがメインになっていました。新しいデバイスを買って渡すということがなく、そのままスライドできたことは大きかったです」と笑顔を見せる。

リモートで会議に参加する人が「発言しやすくなった」

 緊急事態宣言が解除され、電車の混雑具合がじわじわと高まる中でも、さくらインターネットでは出社率10%程度を維持している。

 「コロナ以前は、リモートワークではあまり快適に仕事ができないという声が結構ありましたが、一斉にリモートワークになった結果、思ったより快適に業務を遂行できたという話をよく聞きました」(ユウ氏)

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