減損テストから見る、コロワイドが新潮にブチ切れた理由(後編)専門家のイロメガネ(1/4 ページ)

» 2020年09月22日 07時00分 公開
[村上裕一ITmedia]

 大戸屋へのTOBを成功させた外食大手のコロワイドは、多数の飲食企業を買収することで短期間で急激に成長を遂げてきた。そんなコロワイドが新潮社に対してブチ切れている。

 デイリー新潮が7月6日に掲載した「コロワイド、大戸屋プロキシーファイトに敗れて…前門の虎と後門の狼」で、コロワイドが計上している「のれん」に価値はなく、これを「減損」すれば債務超過に陥ると重大な指摘しているからだ。

 前回の記事では、のれんは保有資産より高値で企業を買収した際に発生する無形の資産であると説明した。

 決算書に意図的な間違いがあれば粉飾決算となり、最悪の場合は上場廃止もあり得る。ではコロワイドの決算書は適正なのだろうか。今回は公認会計士の立場から「減損テスト」について解説してみたい。なお、本稿は一般読者向けに分かりやすい説明を優先した、平易な言葉遣いや表現とした。

減損テストとはなにか?

 コロワイドと新潮のトラブルで、核心となる論点が「減損」と「減損テスト」だ。記事では「のれんが減損で吹き飛べば債務超過に陥る」とあり、のれんの価値があるか無いかを確認する方法が減損テストとなるからだ。

デイリー新潮の主張。のれんの一部を減損すると、債務超過に転落する

 減損は企業が保有している資産について、計上している額に見合った価値がなくなったときに資産の評価額を減らし、その分だけ損失として計上することをいう。企業は決められたルールにのっとって減損を行うべきか判断する必要があり、それが「減損テスト」だ。

 その手法は、のれんの「回収可能価額」を計算し、バランスシート(貸借対照表)に計上されている額と比較をする。もし計算した額の方が低ければバランスシートに計上されていたのれんの額を減らす、つまり減損することになる。

 ここでいう回収可能価額とは、以下の金額のいずれか高い方となる

  1. 使用価値:のれんから生じると見込まれる将来キャッシュフローの割引現在価値
  2. 処分コスト控除後の公正価値:公正価値から、資産の処分に直接起因するコストを控除した金額

 ややこしい説明に見えるかもしれないが、要するに自社で経営するか他社に売った場合、のれんに見合うだけの価値があるのか確認をすることが減損テストである。

 なぜこんな面倒なことをやる必要があるのか? その理由はバランスシートには資産を「時価」で計上しなければいけない、というルールがあるからだ。時価とは「決算書の作成時点でいくらの価値があるか?」という意味だ。

 資産を時価で計上しなければいけない理由は、バランスシートを含めた決算書を見る経営者や株主、銀行等が正しい判断を下せるように、正しいデータを記載しなければいけないから、ということになる。

 そのために必要なことが、決算書を含めて企業を厳しくチェックをする会計士や監査法人の存在であり、上場企業は監査を受けなければ上場を維持することができない。

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