減損テストから見る、コロワイドが新潮にブチ切れた理由(後編)専門家のイロメガネ(2/4 ページ)

» 2020年09月22日 07時00分 公開
[村上裕一ITmedia]

会計士が見てもおかしな手法で債務超過と指摘されたコロワイド

 デイリー新潮は「超過収益力を持つというのは詭弁」という見出しで、コロワイドの貸借対照表に計上されているのれんは、超過収益力を認めることができず減損を行うべきであり、記事の通りに減損を行えばコロワイドは債務超過状態になると掲載している。

 この主張に対してコロワイドは「IFRSはもとより一般会計知識を著しく欠く、全くもって虚偽のものです」と反論している。

 著者も、デイリー新潮の記事に掲載されている、のれんの超過収益力を認めることができないとする「根拠」について、一般の会計基準に照らした会計処理から納得し難いと考える。

 デイリー新潮の記事では、のれんを減損すべき根拠として「日本の上場企業のROE平均である8%を超えていないこと」を挙げている。コロワイドのレインズ事業(主に牛角やしゃぶしゃぶ温野菜)やカッパ・クリエイト事業(主にかっぱ寿司)などのROEが日本の上場企業平均よりも低いことを理由として、のれんの超過収益力が認められない、のれんに減損が必要であると断定している。

 ROEとはReturn on Equityという企業を評価する指標の1つで、日本語では「株主資本(自己資本)利益率」という。

 株主資本を使用して、「どれだけ効率的に利益を計上しているか」を示す指標となる。 その計算式は「ROE=当期純利益÷株主資本」となる。

 しかし、通常、のれんの価値である回収可能価額の算定方法は、前述の通り将来の収益か売却価格によって判断する。のれんの価値とROEは直接的には関係ない。ROEは株主資本(自己資本)に対しての利益率を示した指標であり、その事業が将来もたらす価値とは関係がない。マーケットにおいていくらで売却できるかの金額とも無縁の指標となる。

 投資家が独自の指標で企業価値を算定するのであれば構わないが、監査法人はこのような手法で減損テストは行わない。したがってROEが低いからのれんの超過収益力が認められないと判断することは、あまりに乱暴な判断だといわざるを得ない。

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