丸亀製麺の売上高が対前年比90%まで回復 カギは「衛生マーケティング」と持ち帰り専用容器飲食店を科学する(4/5 ページ)

» 2020年09月29日 05時00分 公開
[三ツ井創太郎ITmedia]

残念な「逆ブランディング行為」

 コロナ禍においては、多くの飲食店がテークアウトを開始しました。私も実際に、あらゆるテークアウト商品の試食調査を行いましたが、正直に申し上げて「急場しのぎ」の商品も少なくありませんでした。せっかく始めたテークアウトやデリバリーでお店の評判を下げてしまう。私はこれを「逆ブランディング行為」と呼んでいます。

 緊急事態宣言という未曾有(みぞう)の状況で、クオリティーの高いテークアウト商品を開発するのはとても大変なことです。しかし、私はこうした時期だからこそ「お客さまの期待を裏切らないお店づくり」が本当に大切だと思っています。

 飲食店の基本に「QSC」という考え方があります。QはQuality(クオリティー=品質)、SはService(サービス)、CはCleanliness(クレンリネス=衛生)です。

 全ての飲食店にとって最重要の繁盛要素がQSCです。しかし、コロナ前には、QSCレベルが低いにもかかわらず「グルメサイトの点数が高い」「インスタ映えする商品がある」といった理由で繁盛を実現しているお店が少なからずあったことも事実です。

 実際に皆さんもグルメサイトの点数やインスタの写真を見て来店したけれど、がっかりしたという経験が一度や二度はあるはずです。

 当社のコンサルティングご支援先などでは、専用のQSCチェックシートを作成します。その上で、店舗ごとにチェックを行い項目別の達成度合を数値化(見える化)します。そして、前月・系列店舗などとの比較を行い「QSCにおける自店の強み・弱み」を明確にした上で、改善を行うPDCAサイクルを構築しています。私は「QSCチェック基準」は、そのお店・その会社の目指すべき姿、ブランド像を表す重要指標だと思っています。

 基準は各社によって異なりますが、100点満点中70点に満たない店舗には「イエローカード」を出し、本部スタッフなどが介入した上で店長と一緒にQSC改善に取り組むといった対策を行ってもらっています。

 コロナ禍においては、多くの消費者が外食を控えました。そして、緊急事態宣言後、久々に外食をする場として「以前に来店したことがある」「QSCが高い」「なじみのお店」を選ぶ傾向が圧倒的に強くなっています。そうした意味でも、丸亀製麺のQSCに対する取り組みや実績は、改めて飲食店経営におけるQSCの大切さを思い出させてくれます。

 「そんなのはトリドールのような上場企業だからできる取り組みだ!」と思われる方もいるかもしれません。しかし、決してそんなことはありません。

 次項では、繁華街の立ち飲み居酒屋業態にもかかわらず、7月度には前年を超える売り上げを達成したお店の事例を見ていきます。

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