中尾氏によると、在宅勤務で生産性が上がったかという内容のアンケートを取ったところ、経理部門に関しては「上がっていない」という人が圧倒的に多かったそうだ。オフィスで上司が話しかけてくるようなことがなくなったので、その分の無駄はなくなったということはある。しかし、本質的に自宅で作業することで作業効率は上がっていないというのが明らかになった。しかし、ここはチャレンジしていかなければならないところ、と中尾氏は語る。
ここまで紹介したように、在宅勤務で経理の業務を効率化するにはシステムの導入が必要になる。とはいえ、システムの切り替えコストや移行の負担は大きい。そこで利用したいのが、クラウドサービスだ。海外の現地法人の財務状況をリアルタイムで把握したり、経費精算がスムーズになったりといったメリットがある。
デジタル化により紙から解放され、ペーパーレスが実現すると、これまで以上に生産性が向上するだろう。紙が残っていると、はんこを押したり、紙に出力するために出社したりという無駄が発生したり、紙を見ながら入力する作業で人件費が増大し、ミスも起きる。紙保管の量が増えれば倉庫のコスト負担も問題になるし、倉庫に収まってしまえばデータの利活用もできない。
とはいえ実際のところ、今すぐ完全なペーパーレス化を行うのは難しい。しかし、将来のために、最初の一歩を踏み出さなければならないのは明白だ。そのためには、経費精算からチャレンジするといい、と中尾氏は話す。領収書などの紙をPDF化するところだけは出社が必要だが、その後のワークフローは在宅勤務でも進められることがメリットだ。データの入力に関しても、AIやOCRの機能が充実すれば、自動化できるようになる。紙の永続保管が不要になり、データの活用も促進されるだろう。
また、繁忙期の「山」を崩すための仕組みを考えることも重要だ。経営陣は会社が大きくなっても事業部門を優先し、正比例して経理部門の人員を増やすことはなかなかない。そのため経理の負担はどんどん大きくなっているという課題がある。
この問題を解決するのに効果的なのが、アウトソーシングだという。月末月初や決算時期などの繁忙期だけアウトソーシングするなどで、平準化をはかることもできる。不足分だけ外部の力を活用し、社員はコア業務に集中させるという使い方も可能だ。
アウトソーシングする際は、今の業務プロセスを見直す必要があるが、この見直しをすることも意外なメリットだろう。社内だけだと融通が利いていまい、非効率なプロセスでも運用できてしまうが、アウトソーシングするためには標準化するしかない。繁忙期の山を崩しつつ、社内の改革も同時に実現してしまうのがアウトソーシングなのだ。
また、業務改革を推進するにはステレオタイプから脱却するマインドセットも重要になると中尾氏は強調した。
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