その理由は、タクシーという本来は旅客運送を行っている事業者の隙間時間をフル活用することで、配送インフラを劇的に進化させることが可能となる点である。
このところ、コロナ危機の影響でウーバーイーツに代表される飲食のデリバリー市場が拡大しているとされる。確かにデリバリーに対するニーズが急増したのは、コロナをきっかけに巣ごもり消費が拡大したことが原因だが、背後にはもっと大きな流れが存在する。それはスマホの普及をきっかけとしたビジネスの担い手の「パーソナル化」である。
近年、スマホが普及したことでビジネスのIT化が進み、ビジネスパーソンのライフスタイルが大きく変わってきた。仕事を個人で完結させるケースが増え、従来とは異なる職場カルチャーが確立している。実際、米国では仕事のパーソナル化が進んだことで、皆でランチに連れ立っていく光景が減り、デリバリーを頼む人が増えていた。
つまり、テレワークの進展やデリバリーの普及という流れは、社会のIT化を背景に以前から存在していたものであり、コロナ危機は変化のスピードを加速させているに過ぎない。そうなると、これから先、デリバリー市場はさらに拡大する可能性が高く、要員の確保を含め、配送インフラの整備が重要なテーマとなってくる。
この問題のブレークスルーとなり得るのがタクシーを使った配送網の確立である。
多くのタクシーが食品配送に対応し、タクシーの場所や移動先といった情報をシステムが一元管理できれば、人工知能(AI)が最適な配送パターンを見つけ出し、空車時間をフル活用できる。タクシー会社としては、もともと旅客運送で一定の収益を確保できるので、隙間時間を使った運送は低コストで請け負うことが可能だ。
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