ビザ審査厳格化でも不十分な「中国スパイ対策」 日本の未来を揺るがす“経済安全保障”の大問題世界を読み解くニュース・サロン(2/4 ページ)

» 2020年10月08日 07時00分 公開
[山田敏弘ITmedia]

「経済安全保障」が注目される理由

 記事では、「経済安全保障政策」として政府が強化するポイントをまとめている。そもそも経済安全保障とは何かと聞かれてすぐに答えられる人はまだそう多くないだろう。ただ最近、新聞を読んでいるとやたらと登場する単語なのは間違いない。

 経済安全保障とは、経済と国家の安全が絡む分野のことをいう。また経済分野における活動や、企業や研究所などから手に入れた情報をもとにライバル国の国力をおとしめるなど、経済から国家の安全保障が脅かされていく場合も当てはまる。例えば、米国をはじめ、日本など各地で排除が進む中国の電子機器大手ファーウェイの問題なら、同社の経済活動が中国という国家の情報収集や覇権争いに使われていると指摘されており、それが米国など国家の安全保障問題になっている。そういうケースも経済安全保障の問題となる。

 日本では、自民党の有志議員でつくる与党の「ルール形成戦略議員連盟」が存在し、経済安全保障対策について声を上げている。最近では、同議連の甘利明会長が、中国製アプリの「TikTok」を排除すべきだと、米国の主張に乗っかった発言をしていた。これも経済安全保障に当てはまるケースである。

日本でも、中国企業のアプリを排除すべきという意見がある(写真提供:ゲッティイメージズ)

 このように注目されている経済安保の対策を強化するというのが、今回の読売新聞の記事の趣旨である。記事によれば、国家安全保障局(NSS)や経済産業省、外務省、防衛省が情報を共有しながら、外国人に対するビザを発給する際の審査を厳格化し、経済安全保障への対策も強化することになる。まず、経産省では「企業や大学の安全保障に関わる技術管理支援」に対して、18.7億円を来年度予算に要求するという。

 また外務省は「外国人研究者や留学生へのビザ発給厳格化」を行い、2.2億円を要求する。NSSは4月に発足した経済班の定員を現在の20人から24人に増やすという。そして日本を守る防衛省は「経済安全保障情報企画官」を新設するらしい。

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