「どうすんねん」 インターンを慌ててオンライン開催に DeNAの模索人事に聞く(1/2 ページ)

» 2020年10月13日 07時00分 公開
[ITmedia]

 「どうすんねん」──3月ごろ、ディー・エヌ・エー(DeNA)の小川篤史さん(ヒューマンリソース本部人材開発部新卒グループ グループマネージャー)は、夏季のインターンを実施すべきかどうかで、頭を抱えていた。新型コロナウイルスの感染が広がる中、従来のオフラインでの開催を諦め、オンラインに切り替えるとして“DeNAらしい”インターンにできるか、不安だった。

 小川さんは「一時、白紙に戻すことも考えた」が、最終的にオンラインで開催。「蓋を開けてみると、うまくは行った」という。どんな工夫をしたのか。

photo オンラインインターンの様子=DeNA提供、編集部で一部加工しています

学生に“いい子過ぎる回答”は求めていない

 インターンは、2022年卒の学生が対象。3〜7月頭まで選考を行い、本番は8月末〜9月半ばに実施した。「新規事業立案コース」「ソフトウェアエンジニアリングコース」「デザインコース」など7種類を用意している。

 特にオンラインとの相性が悪かったのは、新規事業立案のコースだった。

 定員20人に対し、2957人が応募する人気のコースだ。参加者は3人ほどのチームを組み、3日間で新規事業を立案。最終日には、南場智子会長をはじめ審査員の前でプレゼンし、優勝を決めるという内容だ。「議論の内容がほぼそのまま成果物になる」ため、オンラインでのコミュニケーションがうまくいかなければ、成り立たない可能性があった。

 例年、新規事業立案のコースで、小川さんが特に危惧しているのは、学生から“いい子過ぎる回答”が出てくることだという。

 「参加者は“優しい学生”が多い。各所でワークショップに慣れている学生が集まると、表面上はギスギスすることは少ない。そうなると『君の言っていることは分かる、それなら……』といった、波風を立てない議論が延々と繰り返されて進捗しない。これでは本当にいい事業案ができたとはいえない」

 学生の中には、市場規模が大きい事業領域や、一般に社会課題とされている内容、さらには「南場会長が好きそうな事業」を選んで、理論的には成り立っている事業案を作るケースも少なくないという。しかし、当事者意識が高くないまま、そうした事業領域を選ぶと悲劇が待っている。

 「事業を運営していく中で、事前の計画では予想もしなかった局面も迎えるはず。それらを乗り切るだけの熱量が生まれない」と小川さんは指摘する。「波風を立てず楽しく議論ができて、業界への知見も広がる、あくまでプランニングまでが楽しい、という価値観も否定はしない。しかし、当社とはマッチしにくい」

photo ディー・エヌ・エー(DeNA)の小川篤史さん(ヒューマンリソース本部人材開発部新卒グループ グループマネージャー)

 そうした失敗を防ぐために、例年のオフラインのインターンでは、学生が自分の内面をさらけ出し、議論できるように工夫していた。各チームに事業部のメンバー(若手の社員だけでなく、執行役員も含む)が2人、メンターとしてチームに加わり、学生の相談に乗る。

 「全社の中でエース級の社員を投入している。執行役員も、他の業務を3日間止めてコミットしてもらっている。メンターも1人のメンバーとして学生と一緒に事業を作り上げていく。メンター同士のけんかもあるくらいには本気だ」と小川さんは力を込める。

 学生との1on1ミーティングを設け、メンターが自身のキャリア・役職、どんな価値観で仕事に臨んでいるか、許せないことは何か、インターンでは何を求めているのか──といった点を打ち明ける。会話の中で学生の内面も引き出し、相互に理解を深め、インターンの3日間でこんなことを達成しよう、といった目標も決めていく。

オンラインでは、どんな工夫をした?

 従来ならば、こうした機会をインターンの最中に度々設けていた。2人の学生とメンター1人がホワイトボードの前で議論している途中、残りの学生1人とメンター1人が近くのテーブルで1on1で話し合う、という具合だ。新規事業を考えるという本題とは別に、学生の内面を知るために話をする、そんな試みだった。

 しかし、オンラインではそうはいかない。オンライン会議では全員が同じ画面、同じ議題に向き合っているので、個別のコミュニケーションが起こりにくいからだ。常に全員がZoomに接続した状態で、1on1はブレイクアウトルームに移行して行うとなると、特定の学生とメンターがその場からいなくなるため、場の雰囲気も乱れてしまうかもしれない。

 悩んだ小川さんは、どのような方法を取ったのか。

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.