「オレは絶対に悪くない!」という“他責おじさん”が、なぜ出世するのかスピン経済の歩き方(3/6 ページ)

» 2020年10月13日 09時22分 公開
[窪田順生ITmedia]

「他責おじさん」は世に溢れている

 もちろん、こういう類の話は、海外の心理学の研究などもでもよく聞く話だ。例えば、ウォールストリートジャーナル(2014年7月10日)によれば、出世をする人は、自分勝手な利益のために他人に影響を及ぼそうする傾向や、他者への共感や気配りが欠如した反社会的人格など、心理学者が「暗黒の3要素」と呼ぶ人格的特質を「適度」に持っていることが多いことがさまざまな研究で分かっているという。確かに「他人に優しく、思いやりのある善人」が、組織内での厳しい足の引っ張り合いに勝ち残れないのは、多くのサラリーマンが納得することだろう。

 そんな「性格の悪い人間ほど出世しやすい」という現代社会のある意味で普遍的な現象の中で、日本社会の場合は「他人に責任を押しつける」というスキルが特に求められていることなのではないか。

 実際、それがうかがえる調査がある。2019年6月に「エン転職」を運営するエン・ジャパンがユーザー1万1286人を対象に調査したところ、85%が「困った上司のもとで働いたことがある」と回答した。では、その上司の特徴はどんなものだったかというと、「人によって態度を変える」(66%)、「いざというときに部下を守らない」(58%)、「指示・指導が曖昧」(55%)。つまり、上役の顔色をうかがいながら自分に責任が追及されないよう、部下などに責任を押しつける、という典型的な「他責おじさん」なのだ。

「困った上司のもとで働いたことがある」という人に聞く、どのような点で困った上司だと感じましたか? (出典:エン・ジャパン)

 1万人に尋ねてみただけで、これだけ報告されていることは、実はわれわれが想像している以上に「他責おじさん」は世に溢れているということだ。彼らは周囲に「あの人、謝ったら負けだと思ってんのかね」なんてあきれられながらも、クビになることなく、左遷されることもなく、今日も元気に誰かに責任をなすりつけている。つまり、実は日本社会というのは「他責おじさん」たちによって成り立っているのだ。

 そこで皆さんが疑問に思うのは、なぜ日本ではこんな風に「他責おじさん」たちが幅をきかせる「他責のパラダイス」になってしまったのかということだ。いろいろな考えがあると思うが、筆者は、戦後の焼け野原から日本を復興させたのが、外でもない「他責おじさん」たちであったことが大きいとみている。

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